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March 24, 2016 Vol. 374 No. 12

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インクレチン関連薬と心不全に関する多施設共同観察研究
A Multicenter Observational Study of Incretin-based Drugs and Heart Failure

K.B. Filion and Others

背景

糖尿病治療薬である,ジペプチジルペプチダーゼ 4(DPP-4)阻害薬,グルカゴン様ペプチド 1(GLP-1)アナログなどのインクレチン関連薬は,心不全のリスクを上昇させる可能性が懸念されている.進行中の臨床試験はこの問題を効果的に検討するには症例数が十分でない可能性がある.

方 法

一般的なプロトコールを用いて糖尿病患者の複数のコホートを解析した.カナダの 4 州,米国,英国の医療データを使用した.コホート内症例対照分析を用いて,心不全により入院した患者 1 人につき,同じコホートから最大 20 例の対照を,性別,年齢,コホート登録日,糖尿病治療期間,追跡期間に基づいてマッチさせた.インクレチン関連薬の投与を受けていた患者の心不全による入院について,コホートごとのハザード比を,条件付きロジスティック回帰により経口糖尿病治療薬を併用していた患者と比較して推定し,ランダム効果モデルを用いてコホート全体でプールした.

結 果

コホートは全体で 1,499,650 例であり,29,741 例が心不全で入院した(発生率:1,000 人年あたり 9.2 件).心不全による入院の発生率は,インクレチン関連薬の使用によって,経口糖尿病治療薬併用と比較して,心不全の既往がある患者では上昇せず(ハザード比 0.86,95%信頼区間 [CI] 0.62~1.19),心不全の既往がない患者でも上昇しなかった(ハザード比 0.82,95% CI 0.67~1.00).DPP-4 阻害薬と GLP-1 アナログとで結果は変わらなかった.

結 論

糖尿病患者の大規模コホートのデータの解析により,インクレチン関連薬に,一般的に行われている経口糖尿病治療薬の併用と比較して,心不全による入院のリスク上昇との関連は認められなかった.(カナダ健康研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02456428)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 1145 - 54. )