冠動脈疾患のリスク低下に関連する多様体 ASGR1
Variant ASGR1 Associated with a Reduced Risk of Coronary Artery Disease
P. Nioi and Others
いくつかの配列多様体は,冠動脈疾患のリスクを変動させる非高比重リポ蛋白(non-HDL)コレステロールの血清中濃度に影響を与えることが知られている.
アイスランド人 2,636 人のゲノムの配列決定を行って多様体を同定し,それらをアイスランド人約 398,000 人のゲノムに補完した.補完された多様体と non-HDL コレステロールとの関連を,119,146 人で検証した.そして,欧州系の 2 集団で再現性を検証した.欧州系の 5 集団の症例 42,524 例と対照者 249,414 例を対象に,関連が示唆された機能喪失型多様体の 1 つが冠動脈疾患のリスクに及ぼす影響を評価した.より大規模なゲノムセットを用いて,標的遺伝子における別の機能喪失型多様体をスクリーニングした.関連が示唆された多様体の 1 つが蛋白安定性に与える影響を評価した.
ASGR1 のイントロン 4 にまれな非コード 12 塩基対(bp)欠損(del12)を認めた.ASGR1 は,血中糖蛋白の恒常性に関与するレクチンの,アシアロ糖蛋白受容体のサブユニットをコードしている.del12 変異は潜在性スプライス部位を活性化し,フレームシフト変異と未成熟終止コドンを引き起こし,短縮蛋白を分解されやすくする.この変異のヘテロ接合保因者(今回の研究集団では 120 人に 1 人)では,非保因者よりも non-HDL コレステロールが低く,15.3 mg/dL(0.40 mmol/L)の差があり(P=1.0×10-16),冠動脈疾患リスクが低かった(差は 34%,95%信頼区間 21~45,P=4.0×10-6).配列決定を行ったアイスランド人のより大規模なサンプルセットでは,同様に non-HDL コレステロールがより低いこと(P=1.8×10-3)に関連する,別の機能喪失型 ASGR1 多様体(1,850 人に 1 人が保有する p.W158X)が同定された.
ASGR1 ハプロ不全は non-HDL コレステロールがより低いことと,冠動脈疾患リスクがより低いことに関連した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)