February 4, 2016 Vol. 374 No. 5
非糖尿病の肥満妊娠女性におけるメトホルミンとプラセボとの比較
Metformin versus Placebo in Obese Pregnant Women without Diabetes Mellitus
A. Syngelaki and Others
肥満は不良な妊娠転帰のリスクが高いことに関連している.これまでに行われた生活習慣介入試験では,転帰の改善は示されていない.メトホルミンにはインスリン感受性を高める作用があり,妊娠糖尿病の患者でメトホルミンを服用している場合,服用していない場合と比較して体重増加量が少ない.
二重盲検プラセボ対照試験において,体格指数(BMI;体重 [kg]/身長 [m]2)が 35 を超える非糖尿病妊娠女性を,妊娠 12~18 週から出産までメトホルミン 3.0 g/日を投与する群とプラセボを投与する群(各群 225 例)に無作為に割り付けた.BMI は試験登録時(妊娠 12~18 週)に算出した.主要評価項目は,新生児出生体重の z スコア中央値の 0.3 SD 低下(在胎不当過大児の発生率が 20%から 10%に低下,すなわち 50%の減少)とした.副次的評価項目は,母親の妊娠中の体重増加量のほか,妊娠糖尿病,妊娠高血圧腎症,不良な新生児転帰の発生率などとした.無作為化はコンピュータで生成された乱数を用いて行った.解析は intention-to-treat の原則に従って行った.
50 例が試験期間中に同意を撤回したため,メトホルミン群は 202 例,プラセボ群は 198 例となった.新生児出生体重の z スコア中央値に群間で有意差は認められなかった(メトホルミン群 0.05 [四分位範囲 -0.71~0.92],プラセボ群 0.17 [四分位範囲 -0.62~0.89],P=0.66).母親の妊娠中の体重増加量中央値はメトホルミン群のほうがプラセボ群よりも少なく(4.6 kg [四分位範囲 1.3~7.2] 対 6.3 kg [四分位範囲 2.9~9.2],P<0.001),妊娠高血圧腎症の発生率もメトホルミン群のほうが低かった(3.0% 対 11.3%,オッズ比 0.24,95%信頼区間 0.10~0.61,P=0.001).副作用の発生率はメトホルミン群のほうがプラセボ群よりも高かった.妊娠糖尿病,在胎不当過大児,不良な新生児転帰の発生率に,群間で有意差は認められなかった.
BMI が 35 を超える非糖尿病妊娠女性では,出産前のメトホルミン投与により,妊娠中の体重増加量は減少したが,新生児の出生体重は減少しなかった.(胎児医学財団から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01273584,EudraCT 登録番号 2008-005892-83)