集中治療室における家族支援介入の無作為化試験
A Randomized Trial of a Family-Support Intervention in Intensive Care Units
D.B. White and Others
意思決定能力のない急性・重症患者の代理意思決定者は,ケアの目標に関する決定に苦慮することが多い.そのような決定を代理人が行うのは精神的に負担となり,患者の希望に沿わない治療につながる可能性がある.
5 ヵ所の集中治療室(ICU)に入室した死亡リスクの高い患者とその代理人を対象に,対照期から介入期へ移行する(stepped-wedge)クラスター無作為化試験を行い,多職種の ICU チームが提供する複数項目の家族支援介入と通常ケアとを比較した.主要評価項目は,6 ヵ月の時点での代理人における病院環境への不安と抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale [HADS];0~42 で,スコアが高いほど症状が重度であることを示す)の平均スコアとした.事前に規定した副次的評価項目は,代理人におけるイベントインパクト尺度(Impact of Event Scale [IES];0~88 で,スコアが高いほど症状が重度であることを示す),コミュニケーションの質(Quality of Communication [QOC])尺度(0~100 で,スコアが高いほど医師と家族のコミュニケーションが良好であることを示す),代理人評価用に修正した患者中心性に関する患者の認識(Patient Perception of Patient Centeredness [PPPC])尺度(1~4 で,スコアが低いほど患者中心・家族中心のケアが行われていることを示す)のスコアの平均と,ICU 平均在室期間とした.
1,420 例を試験に組み入れた.介入群と対照群で,6 ヵ月の時点での代理人の HADS スコアの平均(それぞれ 11.7 と 12.0,β係数 -0.34,95%信頼区間 [CI] -1.67~0.99,P=0.61)と IES スコアの平均(21.2 と 20.3,β係数 0.90,95% CI -1.66~3.47,P=0.49)に有意差は認められなかった.代理人の QOC スコアの平均は介入群のほうが対照群よりも良好であり(69.1 対 62.7,β係数 6.39,95% CI 2.57~10.20,P=0.001),修正 PPPC スコアの平均も同様であった(1.7 対 1.8,β係数 -0.15,95% CI -0.26~-0.04,P=0.006).ICU 平均在室期間は介入群のほうが対照群よりも短く(6.7 日 対 7.4 日,発生率比 0.90,95% CI 0.81~1.00,P=0.045),これは,死亡例で ICU 平均在室期間が短かったことでもたらされたものであった(4.4 日 対 6.8 日,発生率比 0.64,95% CI 0.52~0.78,P<0.001).
急性・重症患者とその代理人において,多職種の ICU チームが提供する家族支援介入は,代理人の精神症状の負担に有意な影響を及ぼさなかったが,コミュニケーションの質とケアの患者・家族中心性に関する代理人の評価は,介入群のほうが通常ケア群よりも良好であり,ICU 在室期間も介入群のほうが短かった.(ピッツバーグ大学医療センターヘルスシステム,Greenwall Foundation から研究助成を受けた.PARTNER 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01844492)