April 25, 2019 Vol. 380 No. 17
進行性多巣性白質脳症に対するペムブロリズマブ投与
Pembrolizumab Treatment for Progressive Multifocal Leukoencephalopathy
I. Cortese and Others
進行性多巣性白質脳症(PML)は,JC ウイルスによって引き起こされる脳の日和見感染症であり,免疫機能を回復させられなければ通常致死的となる.プログラム細胞死蛋白 1(PD-1)は,ウイルス排除能の低下に寄与している可能性のある免疫応答を抑える制御因子である.ペムブロリズマブを用いた PD-1 阻害により,PML 患者の抗 JC ウイルス免疫活性が再活性化されるかどうかは明らかでなかった.
PML を有する成人 8 例に,ペムブロリズマブ 2 mg/kg 体重を 4~6 週ごとに投与した.各患者は背景にある基礎疾患が異なっていた.投与は 1 回以上,3 回以下とした.
ペムブロリズマブにより,8 例全例で末梢血中および脳脊髄液(CSF)中のリンパ球における PD-1 発現の下方制御が誘導された.5 例では PML の臨床的改善または安定化が得られ,CSF 中の JC ウイルス量の減少と,in vitro における CD4 陽性,CD8 陽性細胞の抗 JC ウイルス活性の上昇も認められた.ほかの 3 例では,ウイルス量や抗ウイルス細胞性免疫応答の程度に意味のある変化は認められず,臨床的改善も得られなかった.
われわれの知見は,一部の PML 患者ではペムブロリズマブにより JC ウイルス量が減少し,JC ウイルスに対する CD4 陽性,CD8 陽性細胞の活性が上昇するという仮説に一致し,ペムブロリズマブの投与を受けた 8 例のうち 5 例で臨床的改善または安定化が得られた.PML 治療における免疫チェックポイント阻害薬はさらに研究を進める必要がある.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)