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April 25, 2019 Vol. 380 No. 17

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C 型肝炎ウイルス感染ドナーから非感染レシピエントへの心臓および肺の移植
Heart and Lung Transplants from HCV-Infected Donors to Uninfected Recipients

A.E. Woolley and Others

背景

C 型肝炎ウイルス血症を有するドナーの心臓と肺は,通常は移植されない.C 型肝炎ウイルス(HCV)感染を治療する直接作用型抗ウイルス薬の登場によって,HCV 感染ドナーの心臓と肺を HCV 非感染レシピエントに移植することが可能になり,ドナー臓器のプールが大幅に拡大する可能性が増した.

方 法

HCV 遺伝子型を問わず,C 型肝炎ウイルス血症を有するドナーの心臓と肺の,HCV 非感染成人への移植に関する試験を行った.ウイルス複製を防ぐため,全遺伝子型に有効な直接作用型抗ウイルス薬レジメンであるソホスブビル–ベルパタスビルを,臓器レシピエントに対し移植後数時間以内に先制的に開始し,4 週間継続した.主要転帰は,HCV 感染に対する抗ウイルス療法終了後 12 週の時点での持続的ウイルス陰性化(SVR)と,移植後 6 ヵ月の時点での移植臓器生着の複合とした.

結 果

44 例が登録され,36 例が肺移植,8 例が心臓移植を受けた.HCV 感染ドナーにおけるウイルス量の中央値は 890,000 IU/mL(四分位範囲 276,000~4,630,000)であった.HCV 遺伝子型は,1 型(ドナーの 61%),2 型(17%),3 型(17%),判定不能(5%)であった.レシピエント 44 例中 42 例(95%)は,移植直後のウイルス量が検出限界以上であり,ウイルス量の中央値は 1,800 IU/mL(四分位範囲 800~6,180)であった.6 ヵ月間の追跡調査を完了した最初の 35 例のうち,全例(100%,正確な 95%信頼区間 90~100)が生存しており,移植後 6 ヵ月の時点で移植臓器の機能は良好,ウイルス量は検出限界以下となった.これらの患者では,ウイルス量は移植後およそ 2 週間で検出限界以下となり,その後も全例で検出限界以下を維持した.重篤な治療関連有害事象は認められなかった.治療の適応となった急性細胞性拒絶反応が生じた症例は,HCV 感染肺の移植を受けた患者コホートのほうが,HCV 非感染肺の移植を受けた患者コホートよりも多かった.この差は交絡の可能性のある要因で補正すると有意ではなかった.

結 論

C 型肝炎ウイルス血症のドナーから心臓または肺の移植を受けた HCV 非感染患者において,抗ウイルスレジメンを移植後数時間以内に開始し,4 週間継続することにより,HCV 感染の確立を防ぐことができた.(メンデス米国国立移植財団研究所ほかから研究助成を受けた.DONATE HCV 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03086044)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 1606 - 17. )