April 25, 2019 Vol. 380 No. 17
完全磁気浮上型左心補助人工心臓 ― 最終報告
A Fully Magnetically Levitated Left Ventricular Assist Device — Final Report
M.R. Mehra and Others
この臨床試験の 2 回の中間解析では,完全磁気浮上型遠心ポンプ方式の左心補助人工心臓で治療された進行した心不全患者は,機械的ベアリングを用いた軸流ポンプ方式の左心補助人工心臓で治療された患者と比較して,ポンプ内血栓,および障害を伴わない脳卒中が発生する確率が低かった.
進行した心不全患者を,意図された使用目的(移植までのつなぎまたは恒久的使用)を問わず,遠心ポンプを植え込む群と軸流ポンプを植え込む群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,2 年の時点における障害を伴う脳卒中のない状態での生存,またはデバイスの不具合による交換・抜去のための再手術を受けていない状態での生存の複合とした.主な副次的エンドポイントは 2 年の時点でのポンプ交換とした.
登録された 1,028 例をこの最終解析の対象とした.内訳は遠心ポンプ群 516 例,軸流ポンプ群 512 例であった.主要エンドポイントの解析では,2 年の時点で生存し,障害を伴う脳卒中のない状態またはデバイスの不具合による交換・抜去のための再手術を受けていない状態であった患者は,遠心ポンプ群で 397 例(76.9%)であったのに対し,軸流ポンプ群では 332 例(64.8%)であった(相対リスク 0.84,95%信頼区間 [CI] 0.78~0.91,優越性の P<0.001).ポンプの交換は遠心ポンプ群のほうが軸流ポンプ群よりも少なかった(12 例 [2.3%] 対 57 例 [11.3%],相対リスク 0.21,95% CI 0.11~0.38,P<0.001).重症度を問わない脳卒中,大出血,消化管出血の 1 患者年あたりの件数は,遠心ポンプ群のほうが軸流ポンプ群よりも少なかった.
進行した心不全患者において,完全磁気浮上型遠心ポンプを用いる左心補助人工心臓は,軸流ポンプを用いる人工心臓と比較して,ポンプ交換を必要とする頻度が低いことに関連しており,障害を伴う脳卒中のない状態,またはデバイスの不具合による交換・抜去のための再手術を受けていない状態での生存に関して優越性を示した.(アボット社から研究助成を受けた.MOMENTUM 3 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02224755)