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February 28, 2019 Vol. 380 No. 9

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頭頂部遠心性瘢痕性脱毛症における PADI3 変異体
Variant PADI3 in Central Centrifugal Cicatricial Alopecia

L. Malki and Others

背景

頭頂部遠心性瘢痕性脱毛症(CCCA)は,アフリカ系女性でもっとも頻度が高い,瘢痕化を伴う脱毛症の一型である.この疾患は,常染色体優性遺伝を示唆する形式で家系内の女性に発症するケースがときおり観察されており,多くの場合,頭皮への負担が大きい髪型にしたあとに臨床的に発症する.われわれは,CCCA の遺伝的基盤が存在するかどうか,もし存在するならばどのようなものかを検討することを試みた.

方 法

脱毛症の女性の 1 群(発見セット)でエクソーム解析を行い,その結果を公共リポジトリにおける結果と比較し,候補遺伝子を同定する目的で他の選別基準を適用した.その後,疾患関連 DNA 変異体を同定する目的で直接配列決定を行い,病因の可能性がある変異の帰結を評価する目的で RNA 配列決定,蛋白質モデリング,免疫蛍光染色法,イムノブロット法,酵素測定を行った.発見セットで得られたデータを確認するために,CCCA を有する女性から成る再現セットを用いた.

結 果

16 例を含む発見セットでは,5 例(31%)の PADI3 において,1 つのスプライス部位変異と 3 つのヘテロ接合性ミスセンス変異を同定した.(この疾患の概算有病率は最大 5.6%である.) PADI3 は,毛幹形成に不可欠な他の蛋白を翻訳後修飾する酵素,ペプチジルアルギニンデイミナーゼタイプ 3(PADI3)をコードする.PADI3 における 3 つの CCCA 関連ミスセンス変異すべてが,高度に保存された残基に影響を与え,病原性を有すると予測され,蛋白質モデリングでは,これらによって蛋白質のミスフォールディングが起こることが示唆された.これらの変異は,PADI3 の発現減少,この蛋白の異常な細胞内局在,酵素活性の低下を引き起こすことが認められ,その病原性を支持する所見であった.免疫蛍光染色法では,CCCA 患者から採取した頭皮の生検検体における PADI3 の発現減少が示された.その後,別の患者 42 例(再現セット)で PADI3 の直接配列決定を行い,そのうち 9 例で遺伝子多様体が観察された.統合データセットの事後解析により,PADI3 変異の保有率は,CCCA 患者のほうが,アフリカ系女性の対照集団よりも高いことが示された(χ2 検定で P=0.002,Fisher の正確確率検定で P=0.006;血縁関係で補正後はそれぞれ P=0.03,P=0.04).

結 論

適切な毛幹形成に不可欠な蛋白をコードする PADI3 における変異は,CCCA と関連していた.(ラムファミリー財団ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 833 - 41. )