Covid-19 に対する Ad26.COV2.S ワクチンの単回接種の安全性と有効性
Safety and Efficacy of Single-Dose Ad26.COV2.S Vaccine against Covid-19
J. Sadoff and Others
Ad26.COV2.S は,遺伝子組換え非増殖型ヒトアデノウイルス血清型 26 をベクターとして,膜融合前の状態で安定化させた重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2(SARS-CoV-2)の全長スパイク蛋白を組み込んだワクチンである.
国際無作為化二重盲検プラセボ対照第 3 相試験において,成人の参加者を,Ad26.COV2.S(ウイルス粒子 5×1010 個)を単回接種する群とプラセボを接種する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,検査で SARS-CoV-2 陰性であった per-protocol 集団における,中等症~重症・重篤な新型コロナウイルス感染症(Covid-19)に対するワクチンの有効性とし,接種後 14 日以降の発症と 28 日以降の発症について検討した.安全性の評価も行った.
per-protocol 集団は,SARS-CoV-2 陰性の参加者で,Ad26.COV2.S の接種を受けた 19,630 例と,プラセボの接種を受けた 19,691 例であった.Ad26.COV2.S は,接種後 14 日以降に発症する中等症~重症・重篤 Covid-19 を防御し(症例数:ワクチン群 116 例 対 プラセボ群 348 例,有効率 66.9%,補正後の 95%信頼区間 [CI] 59.0~73.4),28 日以降に発症する中等症~重症・重篤 Covid-19 も防御した(66 例 対 193 例,有効率 66.1%,補正後の 95% CI 55.0~74.8).重症・重篤 Covid-19 に対する有効率のほうが高かった(接種後 14 日以降の発症について 76.7% [補正後の 95% CI 54.6~89.1],28 日以降の発症について 85.4% [補正後の 95% CI 54.2~96.9]).南アフリカでは,ウイルスの塩基配列解析が行われた 91 例のうち 86 例(94.5%)が 20H/501Y.V2 変異株であったものの,中等症~重症・重篤 Covid-19 に対する有効率は,接種後 14 日以降の発症については 52.0%,28 日以降の発症については 64.0%であり,重症・重篤 Covid-19 に対する有効率は,接種後 14 日以降の発症については 73.1%,28 日以降の発症については 81.7%であった.反応原性(副反応)の頻度は Ad26.COV2.S のほうがプラセボよりも高かったが,大部分が軽症~中等症であり,一過性であった.重篤な有害事象の発現率は 2 群で同程度であった.死亡はワクチン群 3 例(いずれも Covid-19 には関連せず),プラセボ群 16 例(5 例が Covid-19 に関連)であった.
Ad26.COV2.S の単回接種は,症状を伴う Covid-19 と無症候性 SARS-CoV-2 感染を防御し,入院・死亡を含む重症・重篤 Covid-19 に対してより有効であった.安全性は,ほかの Covid-19 ワクチンの第 3 相試験の結果と同様であると思われた.(ヤンセン・リサーチ・アンド・ディベロップメント社ほかから研究助成を受けた.ENSEMBLE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04505722)