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July 1, 2021 Vol. 385 No. 1

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小児多臓器炎症症候群の治療
Treatment of Multisystem Inflammatory Syndrome in Children

A.J. McArdle and Others

背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 に関連する小児多臓器炎症症候群(MIS-C)患者の治療における意思決定を支援するエビデンスが,緊急に必要とされている.

方 法

医師がウェブ上のデータベースにアップロードした MIS-C が疑われる症例に関する臨床データと転帰データを用いて,国際観察コホート研究を行った.逆確率重み付け法と一般化線形モデルにより,免疫グロブリン静注療法(IVIG)を基準として,IVIG+グルココルチコイド投与,グルココルチコイド単独投与と比較評価した.主要転帰は 2 つで,1 つ目は,2 日目以降の強心薬投与もしくは人工呼吸管理,または死亡の複合とし,2 つ目は,2 日目までの順序尺度上での重症度低下とした.副次的転帰は,治療の増強,臓器不全と炎症の重症度低下までの期間などとした.

結 果

2020 年 6 月~2021 年 2 月に,32 ヵ国の患児 614 例の治療経過に関するデータを入手しえた.世界保健機関の MIS-C の基準を満たしていたのは 490 例であった.MIS-C が疑われた 614 例のうち,246 例が一次治療として IVIG 単独,208 例が IVIG+グルココルチコイド投与,99 例がグルココルチコイド単独投与を受け,22 例は生物学的製剤など他の薬剤の投与を併用または単独で受け,39 例は免疫調節療法を受けていなかった.強心薬投与もしくは人工呼吸管理,または死亡は,IVIG+グルココルチコイド群の 56 例(IVIG 単独と比較した補正オッズ比 0.77,95%信頼区間 [CI] 0.33~1.82)と,グルココルチコイド単独群の 17 例(補正オッズ比 0.54,95% CI 0.22~1.33)に発生した.この 2 群の,IVIG 単独群と比較した重症度低下の補正オッズ比は同程度であった(IVIG+グルココルチコイド群 0.90,グルココルチコイド単独群 0.93).重症度低下までの期間は 3 群で同程度であった.

結 論

一次治療が IVIG 単独か,IVIG+グルココルチコイド投与か,グルココルチコイド単独投与かで,MIS-C からの回復に差があることを示す所見は認められなかったが,データが増えるにつれ有意差が生じる可能性もある.(欧州連合ホライズン 2020 プログラムほかから研究助成を受けた.BATS 試験:ISRCTN 登録番号 ISRCTN69546370)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 11 - 22. )