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September 30, 2021 Vol. 385 No. 14

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Wnt 分泌欠損によるヒト多面発現性多臓器障害
A Human Pleiotropic Multiorgan Condition Caused by Deficient Wnt Secretion

G. Chai and Others

背景

構造的先天異常は生児出生の約 3%に生じ,その大部分に,明らかな遺伝的原因,環境的原因は認められない.外科的アプローチは進んでいるが,薬剤で予防する段階には及んでいない.

方 法

世界規模のデータベースで,神経発達障害の子がおり,両親の血族結婚が多数含まれる 20,248 家族を検索した.これらの家族では,罹患した児の約 1/3 が構造的先天異常または小頭症を有していた.患児,両親,またはその両方から採取した検体のエクソームシーケンシングまたはゲノムシーケンシングを行い,2 家族以上に存在する,両アレルの病原性変異または病原性の可能性がある変異を有する遺伝子を同定した.疾患の原因となる変異を同定した後,病原性変異をそれぞれ「ノックイン」したモデルマウスを 2 つ作製し,機序の検討と治療薬候補の試験を行った.妊娠マウスに低分子 Wnt 作動薬を投与し,その子孫を評価した.

結 果

血縁関係のない 5 家族の患児 10 例において,Wnt リガンド分泌メディエータ(Wntless または WLS とも呼ばれる)をコードする WLS のホモ接合性変異を同定した.(Wnt リガンド分泌メディエータは,すべての Wnt 蛋白の分泌に不可欠である.) 患者には,小頭症,顔面形成異常のほか,合趾症,腎無形成,脱毛症,虹彩欠損,心欠損などの多臓器障害がみられた.変異は,WLS 蛋白の安定性と Wnt シグナル伝達に影響を及ぼした.ノックインマウスでは,Wnt シグナル伝達の強度と,胚発生における Wnt の個別の機能と Wnt の総合的な機能に一致する,組織および細胞の脆弱性が示された.Wnt 作動薬の投与によって,胚発生が部分的に回復した.

結 論

重要な Wnt 調節因子に影響を及ぼす遺伝的変異により,症候群性の構造的先天異常が生じた.モデルマウスの結果は,われわれが Zaki 症候群と命名したものが,予防できる可能性のある障害であることを示唆している.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 1292 - 301. )