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July 22, 2021 Vol. 385 No. 4

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処方オピオイドの受領における人種的不平等 ― 個々の医療システムの役割
Racial Inequality in Prescription Opioid Receipt — Role of Individual Health Systems

N.E. Morden and Others

背景

米国では,歴史的に処方オピオイドの受領に人種差がある.個々の医療システムの寄与について,医療システム内での人種別の処方オピオイドの受領を調査することによる検討は十分になされていない.

方 法

医療システムに属する 18~64 歳の黒人および白人の出来高払い方式のメディケア受給者から全米の 40%のサンプルを無作為抽出して,2016 年と 2017 年の請求データを使用した.人種的に多様な 310 の医療システムを同定した(黒人患者と白人患者がそれぞれ 200 人年以上含まれるシステムと定義).代表性を検証するため,これら 310 システムの患者特性とオピオイド受領を全米サンプルと比較した.310 システム内で,オピオイドに関する次の年間指標における黒人患者と白人患者との差を,回帰モデルを用いて調査した:1 回以上の処方箋の調剤,短期間の受領,長期間の受領(1 年間の暦四半期の 4 期すべてでオピオイド処方箋の調剤が 1 回以上ある),オピオイド用量のモルヒネ当量(MME).モデルには患者特性,居住する州,システムを含めた.

結 果

全米サンプルには 2,197,153 人年が含まれ,人種的に多様な 310 のシステムのサンプルには 896,807 人年が含まれた(全米サンプルの全患者の 47.4%,黒人患者の 56.1%に相当).全米サンプルと 310 システムのサンプルとで意味のある差が認められたのは,黒人患者が寄与した人年の割合(21.3% 対 25.9%)のみであった.310 システムのサンプルでは,1 年間に 1 回以上オピオイドを受領した人の未補正の割合は,黒人患者と白人患者との差はわずかであったが(50.2% 対 52.2%),1 年間の平均用量は黒人患者のほうが白人患者よりも 36%少なかった(5,190 MME 対 8,082 MME).個々のシステム内における補正後の各指標の人種差は,集団全体の傾向と同様であった.すなわち,1 年間のオピオイド受領者の割合にはほとんど差がなかったが,1 年間の平均用量は,システムの 91%では白人患者のほうが黒人患者よりも高く,システムの 75%では白人患者のほうが 15%以上高かった.

結 論

個々の医療システム内で,黒人患者と白人患者が受領するオピオイド用量に顕著な差が認められた.これらのシステム特異的な知見から,その差が生じた原因と結果の調査が進む可能性がある.(米国国立老化研究所,米国医療品質研究調査機構から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 385 : 342 - 51. )