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March 24, 2022 Vol. 386 No. 12

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乳癌に対するトラスツズマブ デルクステカンとトラスツズマブ エムタンシンとの比較
Trastuzumab Deruxtecan versus Trastuzumab Emtansine for Breast Cancer

J. Cortés and Others

背景

トラスツズマブ エムタンシンは,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陽性転移性乳癌に対する抗 HER2 抗体とタキサンの併用療法後に,病勢進行が認められた患者に対する現在の標準治療である.

方 法

トラスツズマブとタキサンによる治療歴のある HER2 陽性転移性乳癌患者を対象に,トラスツズマブ デルクステカン(HER2 抗体薬物複合体)の有効性と安全性をトラスツズマブ エムタンシンと比較する,第 3 相多施設共同非盲検無作為化試験を行った.主要エンドポイントは無増悪生存(独立中央判定委員会が盲検下で判定)とし,副次的エンドポイントは全生存,客観的奏効,安全性などとした.

結 果

無作為化された 524 例における 12 ヵ月の時点での無増悪生存率は,トラスツズマブ デルクステカン群で 75.8%(95%信頼区間 [CI] 69.8~80.7),トラスツズマブ エムタンシン群で 34.1%(95% CI 27.7~40.5)であった(進行または全死因死亡のハザード比 0.28,95% CI 0.22~0.37,P<0.001).12 ヵ月の時点での生存率は,トラスツズマブ デルクステカン群で 94.1%(95% CI 90.3~96.4),トラスツズマブ エムタンシン群で 85.9%(95% CI 80.9~89.7)であった(死亡のハザード比 0.55,95% CI 0.36~0.86,事前に規定した有意水準に到達せず).全奏効(完全奏効または部分奏効)割合は,トラスツズマブ デルクステカンの投与を受けた患者で 79.7%(95% CI 74.3~84.4),トラスツズマブ エムタンシンの投与を受けた患者で 34.2%(95% CI 28.5~40.3)であった.グレードを問わない薬剤関連有害事象の発現率は,トラスツズマブ デルクステカン群で 98.1%,トラスツズマブ エムタンシン群で 86.6%であり,グレード 3 または 4 の薬剤関連有害事象の発現率はそれぞれ 45.1%,39.8%であった.薬剤関連と判定された間質性肺疾患または肺炎は,トラスツズマブ デルクステカンの投与を受けた患者の 10.5%とトラスツズマブ エムタンシンの投与を受けた患者の 1.9%に発現したが,グレード 4 または 5 のものはなかった.

結 論

トラスツズマブとタキサンによる治療歴のある HER2 陽性転移性乳癌患者のうち,トラスツズマブ デルクステカンの投与を受けた患者は,トラスツズマブ エムタンシンの投与を受けた患者よりも病勢進行または死亡のリスクが低かった.トラスツズマブ デルクステカンによる治療は,間質性肺疾患および肺炎と関連していた.(第一三共社,アストラゼネカ社から研究助成を受けた.DESTINYBreast03 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03529110)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 386 : 1143 - 54. )