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July 14, 2022 Vol. 387 No. 2

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新生児の低酸素性虚血性脳症に対するエリスロポエチンの試験
Trial of Erythropoietin for Hypoxic–Ischemic Encephalopathy in Newborns

Y.W. Wu and Others

背景

新生児の低酸素性虚血性脳症は,死亡,および生存例の長期的障害の重要な原因である.エリスロポエチンは,低酸素性虚血性脳症の乳児において神経保護作用をもつという仮説が立てられているが,低体温療法と併用した場合に,神経発達の転帰に及ぼす影響は明らかにされていない.

方 法

多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験で,在胎 36 週以降に出生した,中等度~重度の低酸素性虚血性脳症の乳児 501 例を,標準的な低体温療法とともに,エリスロポエチンを投与する群とプラセボを投与する群に割り付けた.エリスロポエチン(1,000 U/kg 体重)またはプラセボとして生理食塩水を,生後 26 時間以内,および生後 2,3,4,7 日の時点で静脈内投与した.主要転帰は,生後 22~36 ヵ月の時点での死亡または神経発達障害とした.神経発達障害は,脳性麻痺,粗大運動能力分類システム(GMFCS)のレベル(尺度:0 [正常]~5 [最大限の障害])が 1 以上,Bayley 乳幼児発達検査第 3 版で認知スコアが 90 点(平均値の -0.67 SD に相当,スコアが高いほど成績が良好であることを示す)未満のいずれかと定義した.

結 果

修正 intention-to-treat 解析の対象 500 例のうち,257 例がエリスロポエチンの投与を受け,243 例がプラセボの投与を受けた.死亡または神経発達障害の発生率は,エリスロポエチン群で 52.5%,プラセボ群で 49.5%であった(相対リスク 1.03,95%信頼区間 [CI] 0.86~1.24,P=0.74).1 例あたりの重篤な有害事象の平均件数は,エリスロポエチン群のほうがプラセボ群よりも多かった(0.86 対 0.67,相対リスク 1.26,95% CI 1.01~1.57).

結 論

低酸素性虚血性脳症に対して低体温療法中の新生児にエリスロポエチンを投与しても,プラセボを投与した場合と比較して死亡または神経発達障害のリスクが低下することはなく,重篤な有害事象の発生率が上昇した.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02811263)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2022; 387 : 148 - 59. )