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April 13, 2023 Vol. 388 No. 15

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帝王切開後の産科出血を予防するためのトラネキサム酸
Tranexamic Acid to Prevent Obstetrical Hemorrhage after Cesarean Delivery

L.D. Pacheco and Others

背景

帝王切開時のトラネキサム酸の予防的使用は,計算で求める出血量を減少させることが示されているが,輸血の必要性に対する効果は明らかにされていない.

方 法

米国の 31 ヵ所の病院で帝王切開を受ける患者を,臍帯結紮後にトラネキサム酸を投与する群と,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,退院,または分娩後 7 日のいずれか早い時点までに発生した母体死亡または輸血の複合とした.重要な副次的転帰は,推定で 1 L を超える術中出血(主な副次的転帰として事前に規定),出血と出血性合併症に対する介入,ヘモグロビン値の術前から術後までの変化,分娩後の感染性合併症とした.有害事象も評価した.

結 果

11,000 例が無作為化され(トラネキサム酸群 5,529 例,プラセボ群 5,471 例),各群で行われた帝王切開のうち,50.1%と 49.2%が予定帝王切開であった.主要転帰イベントは,トラネキサム酸群では 5,525 例中 201 例(3.6%),プラセボ群では 5,470 例中 233 例(4.3%)に発生した(補正後の相対リスク 0.89,95.26%信頼区間 [CI] 0.74~1.07,P=0.19).推定で 1 L を超える術中出血は,トラネキサム酸群の参加者の 7.3%とプラセボ群の参加者の 8.0%に発生した(相対リスク 0.91,95% CI 0.79~1.05).出血性合併症に対する介入は,トラネキサム酸群の 16.1%とプラセボ群の 18.0%に行われ(相対リスク 0.90,95% CI 0.82~0.97),ヘモグロビン値の変化量はそれぞれ -1.8 g/dL と -1.9 g/dL であり(平均差 -0.1 g/dL,95% CI -0.2~-0.1),分娩後の感染性合併症はそれぞれ 3.2%と 2.5%に発生した(相対リスク 1.28,95% CI 1.02~1.61).血栓塞栓イベント,その他の有害事象の頻度は 2 群で同程度であった.

結 論

帝王切開時にトラネキサム酸を予防的に使用しても,母体死亡または輸血の複合転帰のリスクは,プラセボよりも有意に低くならなかった.(ユニス・ケネディ・シュライバー米国国立小児保健・人間発達研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03364491)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 1365 - 75. )