The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

February 9, 2023 Vol. 388 No. 6

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

敗血症性低血圧に対する早期の制限的輸液管理と非制限的輸液管理との比較
Early Restrictive or Liberal Fluid Management for Sepsis-Induced Hypotension

The National Heart, Lung, and Blood Institute Prevention and Early Treatment of Acute Lung Injury Clinical Trials Network

背景

敗血症患者の早期蘇生には,静脈内輸液と昇圧薬が用いられることが多いが,いずれを優先すべきかに関する比較データは限られている.

方 法

米国の 60 施設で行った非盲検優越性試験で,患者を,24 時間にわたり制限的輸液戦略(昇圧薬の使用を優先し,静脈内輸液量を減らす)を用いる群と,非制限的輸液戦略(昇圧薬を使用する前に,静脈内輸液をより多く行うことを優先する)を用いる群に無作為に割り付けた.無作為化は,患者が,「1~3 L の静脈内輸液による初期治療に反応しない敗血症性低血圧」の基準を満たしてから 4 時間以内に行った.90 日目までの自宅退院前の全死因死亡率(主要転帰)は,制限的輸液戦略のほうが非制限的輸液戦略よりも低いという仮説を立てた.安全性も評価した.

結 果

1,563 例が組み入れられ,782 例が制限的輸液群,781 例が非制限的輸液群に割り付けられた.24 時間のプロトコール期間中に行われた蘇生治療は,2 群で異なっていた.制限的輸液群では,輸液量は非制限的輸液群よりも少なく(中央値の差 -2,134 mL,95%信頼区間 [CI] -2,318~-1,949),その一方で,昇圧薬は非制限的輸液群よりも早期に開始され,使用割合も高く,使用時間が長かった.90 日目までの自宅退院前の全死因死亡は,制限的輸液群では 109 例(14.0%),非制限的輸液群では 116 例(14.9%)に発生した(推定差 -0.9 パーセントポイント,95% CI -4.4~2.6,P=0.61).制限的輸液群の 5 例と非制限的輸液群の 4 例でデータの打ち切りがあった(追跡不能).報告された重篤な有害事象の件数は,2 群で同程度であった.

結 論

敗血症性低血圧患者において,この試験で用いた制限的輸液戦略では,非制限的輸液戦略と比較して,90 日目までの自宅退院前の死亡率が有意に低下(または上昇)することはなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所から研究助成を受けた.CLOVERS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03434028)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 388 : 499 - 510. )