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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

May 24, 2001
Vol. 344 No. 21

  • 周産期心筋症の女性における後続妊娠の母親および胎児の転帰
    Maternal and Fetal Outcomes of Subsequent Pregnancies in Women with Peripartum Cardiomyopathy

    疾患がまれなため,周産期心筋症の既往女性におけるその後の妊娠についてはほとんど明らかにされていない.周産期心筋症の既往女性 44 例を対象とするこの研究では,その後の妊娠に関連して,妊娠前に正常な心機能を回復していた女性 28 例と,妊娠前に心機能の低下が持続していた女性 16 例(3 例 [19%] が死亡した)の双方で,症状の悪化と左室機能の低下が生じた.
    このデータは,多数の心臓専門医に調査して収集し,心臓専門医や女性自身への面接で補った.多くの女性についての情報が,おそらく不完全である.にもかかわらず,周産期心筋症の既往女性では,その後の妊娠が心機能に悪影響をおよぼす可能性があることは,明らかだと思われる.

    • フルオロキノロン耐性サルモネラ感染症の集団発生
      An Outbreak of Fluoroquinolone-Resistant Salmonella Infection

      フルオロキノロン耐性サルモネラ感染症の集団発生

      オレゴン州のナーシングホーム 2 施設の患者 11 例で,フルオロキノロン耐性サルモネラ腸炎菌の感染が確認された(尿培養 9 例,便培養 1 例,創傷培養 1 例).発端患者が耐性菌を獲得したのは,おそらくフィリピンでの入院中であった.ナーシングホームにおける直接的な対人接触や,汚染面との接触を通して,伝播が生じた.発症前 6 ヵ月間のフルオロキノロン治療が,感染リスクの上昇と関連していた.
      これは,フルオロキノロン耐性サルモネラ感染症の,米国における最初の集団発生である.集団発生は,院内発生として,しかも対人伝播が関与して生ずるという,サルモネラ感染症としては異例の特徴を示した.フルオロキノロン耐性サルモネラ感染症の院内集団発生が,将来さらに発生する可能性がある.

      • 特発性肝疾患患者におけるケラチン 8 の突然変異
        Keratin 8 Mutations in Patients with Cryptogenic Liver Disease

        肝臓移植を受ける患者の約 10%では,肝疾患の原因が不明である.この研究では,原因不明の肝疾患と,上皮細胞に存在する細胞骨格蛋白質であるケラチンの突然変異との関連の可能性を検討した.ケラチン 8 遺伝子の突然変異は,原因不明の肝疾患の患者 55 例中の 5 例に認めたが,対照患者には認めなかった.
        この報告は,原因不明の肝疾患の一患者におけるケラチン 18 遺伝子の突然変異を示した先行報告に,知見を追加するものである.したがって,原因不明の肝疾患の一部の患者は,おそらくケラチン遺伝子の突然変異に よって説明できるであろう.ストレスに対するケラチンフィラメントの正常反応の障害が,メカニズムとして関与するのかもしれない.

        • グルコキナーゼ完全欠損による永続的新生児糖尿病
          Permanent Neonatal Diabetes Mellitus Due to Complete Glucokinase Deficiency

          グルコキナーゼ完全欠損による永続的新生児糖尿病

          出生時に著明な高血糖を認め,継続的なインスリン治療を要した血縁のない 2 例の新生児において,グルコキナーゼ遺伝子の異なるミスセンス突然変異のホモ接合が認められた.この遺伝子は,膵 β 細胞に存在しグルコースをリン酸化する酵素をコードしていた.それぞれの家族の他の構成員には,後期発症の高血糖症があり,患児と同じグルコキナーゼ遺伝子の突然変異がへテロ接合であった.
          膵 β 細胞において,グルコキナーゼはインスリン分泌を規定する細胞外グルコース濃度のセンサーである.この酵素の突然変異のヘテロ接合性は,これらの家族で生じたような,成長後に発生する若年性糖尿病症候群の原因となる.グルコキナーゼ突然変異がホモ接合の小児で出生時に糖尿病が発症することは,β 細胞中のこの酵素が,インスリン分泌の規定因子として鍵となる役割を果していることをさらに示すものである.

          • プラセボは無力か?
            Is the Placebo Powerless?

            プラセボは,多数の疾患で患者の助けになると報告されてきたが,こうしたエビデンスの質はこれまで厳密に評価されてこなかった.この総説の著者らは,プラセボか無治療のいずれかに患者を無作為に割付けた臨床試験を分析した.大部分の臨床試験では,積極的な治療に割付けられた患者グループも含まれていた.プラセボに強力な臨床的効果があるという証拠は,ほとんど認められなかった.しかし,連続値で表される主観的な評価指標を用いた臨床試験や,疼痛治療に関する臨床試験では,プラセボは小さいが有意な効果があった.
            プラセボが重要な治療とみなされる場合がある.しかし,臨床試験以外では,プラセボの使用がほとんど,あるいはまったく正当化できないことをこの研究の知見は示唆している.

            • 臨床診療:子宮頸癌のスクリーニング
              Clinical Practice: Screening for Cervical Cancer

              臨床診療:子宮頸癌のスクリーニング

              子宮頸部新生物のスクリーニングにより,子宮頸癌の罹患率と死亡率が減少する.この論文は,子宮頸癌に対する定期的な検診の利益を強調すると同時に,検診の開始年齢と終了年齢,検診の頻度,新技術の役割をめぐる論争も明らかにしている.

              • 薬物治療:末梢動脈疾患と跛行の内科的治療
                Drug Therapy: Medical Treatment of Peripheral Arterial Disease and Claudication

                薬物治療:末梢動脈疾患と跛行の内科的治療

                末梢動脈疾患の頻度は高く,主要症状である跛行は,障害を生じさせる場合がある.この総説では,末梢動脈疾患の疫学的特徴,臨床的徴候について概説するとともに,危険因子(喫煙,高脂血症,高血圧)の変化,運動,抗血小板薬を含めた非外科的治療についてまとめている.