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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

March 1, 2001
Vol. 344 No. 9

  • 合成五糖類による深部静脈血栓症の予防
    A Synthetic Pentasaccharide for the Prevention of Deep-Vein Thrombosis

    深部静脈血栓症のリスクがある患者に対して,通常の予防投与は,一般的なヘパリン,低分子ヘパリン,またはワーファリンで行われる.この研究では,抗トロンビンに結合してその作用を増強させる,新規の合成五糖類を評価した.人工股関節全置換術後における深部静脈血栓症の予防に対して,この五糖類は,複数の投与量で,低分子ヘパリンよりも優れていた.また,出血のリスクは,高用量の場合を除いて上昇しなかった.
    五糖類の使用は,抗凝固や深部静脈血栓症の予防に対する,興味深い新たなアプローチである.しかし,この研究は用量設定試験としてデザインされたものなので,より大規模な臨床試験によって,この薬剤の臨床的有効性と安全性を確認することが必要である.

  • 深部静脈血栓症の患者に対する低分子ヘパリンの効果
    Effects of a Low-Molecular-Weight Heparin in Patients with Deep-Vein Thrombosis

    深部静脈血栓症の患者に対する低分子ヘパリンの効果

    深部静脈血栓症の患者を対象とするこの研究では,標準的なヘパリンの静注療法と,低分子ヘパリンであるレビパリンの皮下投与を比較した.静脈造影で確認した血栓縮小と,血栓症の再発予防に関して,レビパリンは,標準的なヘパリンよりも効果的であった.大出血の発生頻度は,すべての治療群間で同程度であった.
    血栓の退縮に対するレビパリンの効果の評価を通して,この研究は,低分子ヘパリンが深部静脈血栓症に対する有用な治療の選択肢であるという根拠を加えた.血栓の退縮を促進し,深部血栓症の再発を予防する上で,低分子ヘパリンのレビパリンは,標準的なヘパリンよりも優れていた.

  • 日本における緑茶と胃癌のリスク
    Green Tea and the Risk of Gastric Cancer in Japan

    緑茶は,日本や他のアジア諸国で,広く飲用されている.先行研究では,緑茶が胃癌の発生を予防する可能性が示唆されてきた.この人口ベースの前向きコホート研究は,胃癌の罹患率が高い北日本の一地域で行われた.この研究では,緑茶の摂取と胃癌のリスクの間に,関連性を認めなかった.
    動物実験のデータや症例対照研究では,緑茶が胃癌発生に対する予防作用を持つ可能性が示されている.この人口ベースの前向きコホート研究では,419 例の胃癌症例を確認したが,緑茶による胃癌予防は認められな かった.

  • 女性における HHV-8 の伝播
    Transmission of HHV-8 in Women

    ヒトヘルペスウィルス 8(HHV-8)は,カポジ肉腫と関連し,同性愛の男性では性行為を通して伝播することが知られている.この研究では,女性の HHV-8 血清陽性率は,毎日の薬物注射,HIV 感染,梅毒の検査陽性と独立の関連を示した.性行為を通した伝播のリスクが低い女性のあいだでは,薬物注射の使用が,HHV-8 血清陽性率と強く関連していた.
    女性を対象とするこの研究は,HHV-8 の伝播が,異性との性行為や,注射針の共有による血液曝露を通して生ずるという根拠を示している.しかしながら,血液を媒介とする伝播の確率は,HHV-8 の場合,B 型肝炎ウィルス,C 型肝炎ウィルス,HIV の場合よりも低いと思われる.

  • 臨床的に適切な冠動脈血管再建術の実施不足
    Underuse of Clinically Appropriate Coronary Revascularization Procedures

    患者に対しての冠動脈血管再建術の勧告には,医師間に大きな差が存在する.この研究では,専門家委員会が,さまざまな状況化における血管再建術の臨床的適応の適切さについて,点数評価を行った.続いてこの評価規準を,冠動脈血管造影を行った大規模な患者集団に適用した.冠動脈形成術が適切と判定された患者のうち,34%では形成術が実施されておらず,形成術が未実施の患者の臨床転帰は,実施患者よりも劣っていた.同様に,冠動脈バイパス術が適切と判定された患者のうち,26%ではバイパス術が実施されておらず,転帰も 劣っていた.
    この研究は,冠動脈血管再建術の実施がかなり低く,また実施不足が臨床的転帰の悪化と関連することを示唆している.この研究の含意するところは,冠動脈血管再建術の実施に関する臨床的意思決定の中に,実施の適切性の明確な指標を取り入れるべきである.

  • 免疫学の進歩:免疫寛容と自己免疫
    Advances in Immunology: Tolerance and Autoimmunity

    免疫学の進歩:免疫寛容と自己免疫

    免疫寛容には,特定の抗原に応答する免疫系の能力を解除する,多数のメカニズムが含まれる.免疫寛容は,生体が自己免疫による障害を回避するための主要な手段である.この総説では,免疫寛容のメカニズムについて,T 細胞と自己免疫疾患に重点を置いて議論している.

  • プライマリケア:嚥下性肺実質炎と嚥下性肺炎
    Primary Care: Aspiration Pneumonitis and Aspiration Pneumonia

    プライマリケア:嚥下性肺実質炎と嚥下性肺炎

    嚥下性肺症候群は,重篤な疾患の原因として一般的であるが,誤診されたり,治療が不十分なことが多い.嚥下性肺実質炎は化学的損傷であり,感染プロセスである嚥下性肺炎とは区別しなければならない.その他の嚥下症候群として,気道閉塞,肺膿瘍,外因性リポイド肺炎,慢性間質性線維症がある.