The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み
  • 目 次
  • This Week at NEJM.org

    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

September 27, 2001
Vol. 345 No. 13

ORIGINAL ARTICLES

  • 術後イレウス期間の短縮
    Reducing the Duration of Postoperative Ileus

    術後イレウス期間の短縮

    術後イレウスは,大きな腹部手術後の入院期間を延長させる主因である.術後疼痛の治療にオピオイドを使用することで,この問題は複雑になる.というのも,オピオイド系薬により,消化管機能の回復が遅れるからである.ADL 8-2698 は,臨床治験中のオピオイド拮抗薬であるが,オピエートの鎮痛効果を低下させないと考えられている.結腸部分切除術,または腹式子宮全摘術が行われた患者において,この薬剤が検討された.プラセボと比べて,ADL 8-2698 では,初回の腸管ガス排出,初回の排便,退院までの時間が短縮した.

    今回の知見は,大きな腹部手術後の患者がより迅速に回復することを支援するための,新たなアプローチを示している.術後疼痛は中枢性に阻害されるが,オピオイドの腸管に対する作用は,局所性の拮抗薬で抑制される.

  • 閉経前女性の骨密度に対する吸入グルココルチコイドの影響
    Effects of Inhaled Glucocorticoids on Bone Density in Premenopausal Women

    グルココルチコイドの吸入療法は,現在,喘息患者の大半に勧められている.グルココルチコイドの経口療法により骨喪失が生ずることが知られているが,グルココルチコイドの吸入療法により骨喪失が生ずるか否かは,意見が分かれている.この前向き研究では,トリアムシノロンの吸入療法を受けた閉経前女性 109 例を対象に,骨密度の測定を 3 年間行った.グルココルチコイドの吸入療法に関連して,股関節全体と転子の骨密度が,用量依存的に減少した.しかし大腿骨頸部と腰椎では,用量依存的な減少はなかった.

    この研究の結果は,高用量のグルココルチコイドの吸入により,骨喪失が生じうることを示している.グルココルチコイドの吸入量は,できるだけ少なくすべきである.また,高用量の投与を受けている患者に対して,骨喪失を最小限に抑えるための措置を講ずるべきである.

  • 前立腺癌のアンドロゲン除去療法中における骨喪失予防のためのパミドロン酸
    Pamidronate to Prevent Bone Loss During Androgen-Deprivation Therapy for Prostate Cancer

    性腺刺激ホルモン放出ホルモン作用薬で治療を受けている前立腺癌の男性では,骨塩密度が低下し,それに伴って骨折のリスクが上昇する.この研究では,進行前立腺癌の男性 41 例が,リュープロリドの単独投与か,リュープロリドとパミドロン酸の併用投与を受けた.パミドロン酸の投与を受けた男性では,骨塩密度の有意な変化はなかったのに対して,リュープロリドの単独投与を受けた男性では,骨量が有意に減少した.

    前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法により,骨喪失が生ずる.しかし,破骨細胞による骨吸収を抑制する,第二世代のビスホスホン酸であるパミドロン酸は,この問題を予防すると考えられる.

  • パーキンソン病に対する脳深部刺激
    Deep-Brain Stimulation for Parkinson's Disease

    パーキンソン病に対する脳深部刺激

    パーキンソン病患者の不随意運動と可動性の低下は,視床下核と淡蒼球内節におけるニューロン活動の亢進を反映したものと考えられている.進行パーキンソン病患者を対象とするこの二重盲検前向き臨床試験では,これらの脳深部領域に対する両側性刺激の効果を検討した.両側性刺激に関連して,患者に不随意運動がなく可動性が良好な時間の割合が,有意に増加した.

    脳内への電極埋め込みによって,脳内出血などの深刻な帰結が生ずる可能性があるが,進行パーキンソン病の患者の一部を助けることが可能である.この方法は,脳深部構造に損傷を形成する手技よりも,重篤な合併症の頻度が少ないと思われる.

SPECIAL ARTICLE

  • Special Article:コンピュータによる注意喚起と入院患者に対する予防医療
    Special Article: Computerized Reminders and Preventive Care for Inpatients

    Special Article:コンピュータによる注意喚起と入院患者に対する予防医療

    入院環境における予防医療実施の増加に対する,コンピュータによる注意喚起の効果は明らかでなかった.一般的な医療目的で入院した患者を対象とする,この無作為割付け比較対照臨床試験では,コンピュータによる注意喚起によって,適切な候補患者に対する,肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの予防接種,ヘパリンとアスピリンの予防的投与に関する退院時での指示率が,有意に増加した.

    入院患者に対する治療の慌しさのなかで,予防医療の機会が見逃されてしまうことが頻繁にある.臨床コンピュータシステムは,予防的介入によって利益を受ける可能性のある患者について,臨床医の注意を喚起することで,予防医療の向上に重要な役割を果しうる.効率的なコンピュータシステムは,予防的介入を指示するプロセスを簡略化することも可能である.

REVIEW ARTICLE

  • 疾患のメカニズム:若年発症成人型糖尿病
    Mechanisms of Disease: Maturity-Onset Diabetes of the Young

    疾患のメカニズム:若年発症成人型糖尿病

    若年発症成人型糖尿病(MODY)は,通常は軽度の糖尿病病態であり,インスリン分泌調節物質の発現に関与するいくつかの遺伝子のうち,いずれか一つに変異が生ずれば発症する.この総説では,MODY のさまざまな病型の患者に起こる,臨床的,機序的,遺伝的異常について解説している.