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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

November 1, 2001
Vol. 345 No. 18

ORIGINAL ARTICLES

  • 正常高値血圧の臨床的影響
    Clinical Impact of High-Normal Blood Pressure

    正常高値血圧の臨床的影響

    明白な高血圧は,心血管系イベントのリスク上昇と明らかに関連するが,正常高値の血圧の意義は,それほど明らかではない.フラミンガム研究からの今回の前向き分析は,血圧が正常高値の男女双方で,最適血圧の場合よりも,心血管系イベントの相対危険度が有意に高いことを示している.

    正常高値血圧は,心血管系イベントのリスクの上昇と関連している.正常高値の範囲の血圧を治療することで,このリスクを減少できるか否かを,今後示す必要がある.

  • 股関節部骨折手術後の静脈血栓塞栓症予防に関するエノキサパリンとフォンダパリヌクスの比較
    Fondaparinux versus Enoxaparin to Prevent Venous Thromboembolism after Hip-Fracture Surgery

    股関節部骨折の手術後における静脈血栓塞栓症の予防に関する試験で,フォンダパリヌクスと,低分子量ヘパリンであるエノキサパリンを比較した.フォンダパリヌクスは,血栓予防に関してエノキサパリンより優れており,忍容性も高かった.

    股関節部骨折の手術後における静脈血栓塞栓症はやっかいな問題であり,血栓予防に低分子量ヘパリンを用いても,発生率が高い(10~20%).活性化第 X 因子を選択的に阻害する新規の合成五糖類であるフォンダパリヌクスの,股関節部骨折手術後の静脈血栓塞栓症予防に関する今回の有望な結果は,大きな注目に値するものである.

  • 膝関節大手術後の静脈血栓塞栓症予防に関するエノキサパリンとフォンダパリヌクスの比較
    Fondaparinux versus Enoxaparin to Prevent Venous Thromboembolism after Major Knee Surgery

    膝関節大手術後の静脈血栓塞栓症予防に関するエノキサパリンとフォンダパリヌクスの比較

    膝関節の大手術により,術後の静脈血栓塞栓症のリスクが相当高くなる.この研究では,膝関節手術後の静脈血栓塞栓症の予防に関して,新規の抗血栓五糖類であるフォンダパリヌクスが,低分子量ヘパリンであるエノキサパリンを越える作用をもつことが認められた.

    フォンダパリヌクスは合成抗凝固薬であり,アンチトロンビンに結合して,凝固に不可欠な蛋白質である活性化第 X 因子(Xa 因子)の,アンチトロンビンによる急速な不活化を生じさせる.膝関節手術の術後の静脈血栓塞栓症を予防することはこれまで困難であったことから,この手術を受けた患者ではフォンダパリヌクスがエノキサパリンよりも良好であったという今回の知見は重要である.

SPECIAL ARTICLE

  • ある民間健康保健医療団体における入口監視制度の廃止の影響
    Effects of Eliminating Gatekeeping in a Health Maintenance Organization

    ある民間健康保健医療団体における入口監視制度の廃止の影響

    専門医への紹介に関してプライマリケア医の事前承認を求める入口監視は,医療費を管理し医療を調整する重要な手段と見なされてきたが,この制度を好まない患者と医師が多い.この研究は,入口監視の廃止後初期の 18 ヵ月間において,成人の専門医診療の利用に顕著な影響がなかったことを示した.

    今回の結果は,専門医への受診機会を制限する入口監視の実施による医療費への影響が,これまで考えられていた以上に小さいことを示唆している.しかし,この研究はグループ診療モデルのある民間健康保健医療団体のみを対象に行われたものなので,他の医療保険にも結果を一般化できるとは限らない.

MEDICAL PROGRESS

  • 医学の進歩:成人における感染性心内膜炎
    Medical Progress: Infective Endocarditis in Adults

    医学の進歩:成人における感染性心内膜炎

    この複雑な感染症の臨床的特徴は,過去数十年で変化した.感染性心内膜炎は,今日では高齢者の感染症であり,僧帽弁逸脱が,先進国における先行心血管疾患としてもっとも多い.対照的に,リウマチ性心疾患が,発展途上国における重要な先行疾患である.この総説では,重症感染症であるこの疾患について,診断上の課題と心血管系と神経系の合併症,および治療へのアプローチを含む包括的な考察を示している.

REVIEW ARTICLE

  • 免疫学の進歩:母親由来抗体と,小児期の感染および自己免疫疾患
    Advances in Immunology: Maternal Antibodies, Childhood Infections, and Autoimmune Diseases

    免疫学の進歩:母親由来抗体と,小児期の感染および自己免疫疾患

    2000 年 7 月に開始した免疫学シリーズは,ノーベル賞受賞者である Rolf Zinkernagel による今回の論考をもって終了する.Zinkernagel の論説は,母親の免疫記憶が,小児期におけるワクチンの有効性や感染症への感受性におよぼす影響に関するものである.氏の論考は,地域社会全体の免疫(集団免疫)が,母親のみならず後続の世代における免疫防護に影響する次第を概括している.Zinkernagel は,手ぬるいワクチン接種プログラムや,生活水準の向上による充足が,感染症や自己免疫疾患の感受性に対して将来世界的な影響を及ぼすことを警告している.