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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

December 13, 2001
Vol. 345 No. 24

  • 心理社会的支援と転移性乳癌の生存
    Psychosocial Support and Survival in Metastatic Breast Cancer

    この無作為割付け臨床試験では,支持 - 自己表出的グループ療法と呼ばれる形式のグループ療法を標準的な治療に追加しても,転移性乳癌女性の生存期間は延長しなかった.しかしながら,このグループ療法により,心理的症状は緩和された.
    いままでの報告では,支持 - 自己表出的グループ療法により,転移性乳癌女性の生存期間がかなり延長することが示されていた.厳密な対照群を設定したこの臨床試験では,先行報告の結果は確認されなかった.

  • 髄膜炎の疑い症例に対する CT と腰椎穿刺
    CT and Lumbar Puncture for Suspected Meningitis

    髄膜炎の疑い症例に対する CT と腰椎穿刺

    この前向き研究では,髄膜炎の疑いがある成人 235 例に対して,腰椎穿刺を行う前に,頭部のコンピュータ断層撮影(CT)を実施した.患者の 24%で,検査結果が異常を示した.研究開始時における 13 の臨床的特徴と神経学的特徴の存在は,いずれも CT 上の異常所見のリスクと有意に関連していた.研究開始時にこれらの特徴がまったくなかった患者では,97%で CT スキャンの結果が正常であった.
    60 歳以上の年齢や理学検査における神経学的異常のような臨床的特徴の欠如によって,髄膜炎を疑う患者の中で,頭部 CT 検査が異常を示す可能性の低い者を識別することが可能である.今回の患者集団では,この方法で CT スキャンの 41%を回避できたはずであり,腰椎穿刺までの遅れを低減できたはずである.

  • アルコール依存症に対するナルトレキソン
    Naltrexone for Alcohol Dependence

    アルコール中毒は,深刻な疾患であり,治療が困難である.アヘン受容体拮抗薬のナルトレキソンは,アルコール依存症の治療薬として米国食品医薬品局に承認されているが,その有効性は明らかではない.退役軍人(大半が男性)を対象とするこの研究では,慢性の重症アルコール依存症に対して,ナルトレキソンと禁酒会への参加や他の心理社会的療法を併用しても,プラセボ以上の有効性を示す証拠は認められなかった.
    今回の知見は,慢性の重症アルコール依存症患者の治療にナルトレキソンを用いることに疑問を呈し,よりよい治療の必要性を強調するものである.

  • 再発性脳卒中の危険因子としての卵円孔開存と心房中隔動脈瘤
    Patent Foramen Ovale and Atrial Septal Aneurysm as Risk Factors for Recurrent Stroke

    再発性脳卒中の危険因子としての卵円孔開存と心房中隔動脈瘤

    卵円孔開存と心房中隔動脈瘤は,脳卒中の潜在的な危険因子とされてきた.この研究では,これらの構造的異常が,単独または組み合せによって,再発性脳卒中のリスクを上昇させるか否かを検討した.卵円孔開存と心房中隔動脈瘤が両方ある患者では,再発性脳卒中のリスクが顕著に高かったが,どちらか一方の病変のみを有する患者では,顕著なリスクの上昇はなかった.
    患者全例がアスピリンの予防的投与を受けていたので,卵円孔開存と心房中隔動脈瘤が両方ある脳卒中の既往患者に対して,他の予防戦略を検討しなければならない.

  • 医学の進歩:遺伝性周期熱
    Medical Progress: Hereditary Periodic Fever

    医学の進歩:遺伝性周期熱

    不明熱は,家族性で周期的な経過をとる場合がある.この論文では,家族性地中海熱,高 IgD 症候群,腫瘍壊死因子関連周期性症候群という,3 種類の遺伝性周期熱症候群について論じている.それぞれは,異なる遺伝子の突然変異が原因であり,異なる民族集団が罹患する.この総説では,これらの疾患の病態生理の理解に関する重要な最近の進歩が示されている.

  • 糖尿病,インスリン,および膵臓β細胞のミトコンドリア
    Diabetes, Insulin, and the Pancreatic Beta-Cell Mitochondrion

    糖尿病,インスリン,および膵臓β細胞のミトコンドリア

    インスリン分泌膵島細胞は,グルコース酸化産物がインスリン分泌に影響を与える生化学的な場である.培養膵島細胞での研究により,アンカップリング蛋白 2(UCP2)と呼ばれるミトコンドリアのイオンキャリアが,グルコース刺激性のインスリンレベルに影響を及ぼすことが示されている.最近の報告によれば,UCP-2 遺伝子不活化マウスでは,インスリン分泌が亢進し血糖レベルが低下することが示されている.肥満,インスリン抵抗性,糖尿病を有する ob/ob マウスでこの遺伝子をノックアウトすると,インスリン分泌が上昇し高血糖が改善した.
    ob/ob マウスでは,UCP2 の過剰産生が 2 型糖尿病の発生に寄与すると思われる.この蛋白質は,糖尿病と肥満の相互作用において決定的な役割を果している可能性がある.