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This Week at NEJM.org
NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.
January 3, 2002
Vol. 346 No. 1
ORIGINAL ARTICLES
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移植心臓のキメリズム
Chimerism of the Transplanted Heart8 例の男性患者が女性ドナーから心臓移植を受けた.これらの移植心臓の標本では筋細胞の約 10%に Y 染色体が検出され,これらの細胞が男性レシピエントに由来することが明らかになった.この結果は,レシピエント由来の細胞がドナー心臓に移行し,定着することを示している.Y 染色体陽性細胞の一部は原始細胞であり,増殖能を有していた.
レシピエントから移植心臓に移行した細胞の起源は不明であるが,この研究により,レシピエント由来の原始細胞が,ドナー心臓に移行して心臓再構築プロセスに関与するという可能性が出てきた. -
精神分裂病患者の再発予防におけるリスペリドンとハロペリドールの比較
Risperidone versus Haloperidol to Prevent Relapses of Schizophrenia再発予防は,精神分裂病患者および分裂感情障害患者の治療の重要な目的である.この試験では,臨床的に安定した成人外来患者を対象に,新しい非定型抗精神病薬であるリスペリドンと,古い従来型神経弛緩薬であるハロペリドールの再発予防効果を比較した.その結果,リスペリドンを投与した患者のほうが,再発リスクが低かった.
精神分裂病患者は,典型的には,再発が頻発し入院を繰り返すという慢性経過をたどる.この試験で得られた知見は,リスペリドンが一部の患者に有益である可能性を示唆しており,他の新規抗精神病薬に関する研究に弾みを付けると考えられる. -
溶血性尿毒症症候群に先行するプロトロンビン凝固異常
Prothrombotic Coagulation Abnormalities Preceding the Hemolytic-Uremic Syndromeこの前向き研究には,E. coli O157:H7 に感染した患児 53 例が含まれていた.溶血性尿毒症症候群は患児 16 例で発症したが,窒素血や血小板減少症の発症に先行して凝固異常が認められた.凝固異常は,プロトロンビンフラグメント 1+2,組織プラズミノーゲン活性化因子抗原およびプラスミン–抗プラスミン複合体濃度の上昇などであった.
溶血性尿毒症症候群は E. coli O157:H7 に感染した小児の一部に発症する重篤な合併症で,通常下痢が起ってから 1 週間後に発症する.この研究は血栓生成とフィブリン溶解の抑制が腎損傷に先行して起り,腎損傷の原因となりうる可能性を明示している. -
妊娠間隔と子癇前症のリスク
The Interval between Pregnancies and the Risk of Preeclampsia子癇前症のリスクは,初回妊娠に比べて 2 回目の妊娠では,妊婦のパートナーが同じ場合は低いが,異なる場合は低くはない.この知見は,パートナーが変わるというより,出産間隔が長くなることで説明できるのではないかと考え,それを明らかにするために,この研究では,ノルウェーの大規模出生登録からデータを抽出し検討した.2 回目または 3 回目の妊娠では,子癇前症のリスクが出産間隔に直接相関し,前回の妊娠から次の妊娠までの期間が 10 年以上経つと,初回妊娠時のリスクとほぼ同じになった.
これらの知見から,前回の妊娠に関連した子癇前症のリスクの低下は一時的であると示唆される.これまでパートナーの変更により認められた子癇前症の危険性の増大は,むしろ前回の出産から次の妊娠までの間隔が長くなるからであると思われる.
CLINICAL PRACTICE
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臨床診療:結腸直腸癌のスクリーニング
Clinical Practice: Screening for Colorectal Cancer年齢以外に結腸直腸癌の危険因子がない健康な 50 歳の女性が,年 1 回の検査を受診した.どのような結腸直腸癌スクリーニング検査を行うべきか?
この論文は,3 検体を用いる便潜血検査,S 状結腸鏡検査,大腸内視鏡検査などを含めた,結腸直腸癌の各種スクリーニング検査計画を総説している.
REVIEW ARTICLE
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疾患のメカニズム:α1 アンチトリプシン欠損症 ― 蛋白の構造変化による疾患モデル
Mechanisms of Disease: Alpha1-Antitrypsin Deficiency ― A Model for the Conformational Diseasesα1 アンチトリプシンは,セルピンとして知られるプロテアーゼ阻害剤ファミリーの一員である.これら分子の変異により疾患をきたす可能性があり,それは組織中のプロテアーゼの生物活性が上昇するからだけでなく,この変異により誤って折り畳まれた(すなわち構造的に異常ある)プロテアーゼ分子が組織内に蓄積するからでもある.この総説論文では,これらプロテアーゼ阻害剤の作用をまとめ,プリオン脳症やアルツハイマー病のような特定の神経変性疾患で,変異によりどのようにしてプロテアーゼ阻害剤が蓄積していくのかを述べている.