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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

June 27, 2002
Vol. 346 No. 26

ORIGINAL ARTICLES

  • 経口避妊薬と乳癌のリスク
    Oral Contraceptives and the Risk of Breast Cancer

    経口避妊薬使用の乳癌リスクへの影響に関する症例対照研究において,浸潤性乳癌と診断された女性 4,575 例および対照群 4,682 例に経口避妊薬の使用について問診を行った.経口避妊薬の使用が乳癌のリスクを増加させるという証拠はなかった.
    慎重なデータ解析によるこの大規模で詳細な研究の知見は,経口避妊薬の使用で乳癌のリスクは増加しないと医師や女性たちを安心させるであろう.この研究の注目すべき特徴は,妊娠可能年齢のあいだに経口避妊薬を使用していた高齢女性の大多数に乳癌リスクの増加がみられなかったことである.

  • アスピリンの使用による潰瘍合併症の再発を予防するためのランソプラゾール
    Lansoprazole to Prevent Recurrences of Ulcer Complications from Aspirin Use

    アスピリンの使用による潰瘍合併症の再発を予防するためのランソプラゾール

    心疾患または脳卒中に対する予防法としての低用量アスピリンの使用,およびヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)感染の存在は,共に潰瘍による上部消化管出血の危険因子である.この研究では,潰瘍からの出血と H. pylori 感染の両方を有し,低用量アスピリンを服用している患者に対し,H. pylori を除菌し,続いてランソプラゾール投与群(62 例)またはプラセボ群(61 例)のいずれかに無作為に割付け,低用量アスピリンによる治療を続けながら中央値12 ヵ月のあいだ追跡した.潰瘍合併症の再発は,ランソプラゾール群では 1 例,プラセボ群では 9 例であった(P=0.008).
    これらデータは,潰瘍合併症を発症する患者において H. pylori 感染除菌後,ランソプラゾールが治療レジメンに加えられる場合,低用量アスピリン治療をより安全に続けられることを示している.

  • HIV 感染の初期治療としてのロピナビル-リトナビル
    Lopinavir-Ritonavir for the Initial Treatment of HIV Infection

    HIV 感染の初期治療としてのロピナビル-リトナビル

    ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の初期治療に関するこの研究では,患者 653 例をロピナビル-リトナビル投与群またはネルフィナビル投与群に無作為に割付けた.全例に,スタブジンとラミブジンも投与した.48 週後,HIV RNA が 50 コピー/mL 未満に抑制されたのは,ロピナビル-リトナビル群患者の 67%に対して,ネルフィナビル群の患者では 52%であった(P<0.001).
    ロピナビルは,薬物動態学的特性を向上させるためにリトナビルと配合されたプロテアーゼ阻害剤である.この配合での治療は忍容性が高く,また HIV 複製を効果的に抑制すると共に耐性変異の出現頻度を低下させたようであった.この薬剤配合の長期的効果はまだ明らかではない.

  • 上昇した心筋トロポニン T 濃度の予後予測における有用性
    Prognostic Value of Elevated Cardiac Troponin T Levels

    上昇した心筋トロポニン T 濃度の予後予測における有用性

    心筋トロポニン T 濃度は,急性冠症候群が疑われる患者のリスクを予測するのに一般的に使用される.心筋トロポニン T は腎臓で排泄されるため,心筋トロポニン T が腎機能不全患者でも依然として予後予測に有用であるかどうかは定かではない.この研究は,心筋トロポニン T の測定が,急性冠症候群が疑われる腎障害患者においてリスクを確かに予測することを示している.
    急性冠症候群患者における心筋トロポニン T 濃度の予後予測での有用性は,腎機能不全の存在により無効にはならないことがわかったいま,医師は安心することができる.

BRIEF REPORT

  • 短報:抗中性エンドペプチダーゼ抗体による出生前の膜性糸球体腎炎
    Brief Report: Antenatal Membranous Glomerulonephritis Due to Anti-Neutral Endopeptidase Antibodies

    短報:抗中性エンドペプチダーゼ抗体による出生前の膜性糸球体腎炎

    重大な原発性腎症である膜性糸球体腎炎の特徴は,糸球体基底膜外面上の免疫沈降物の存在である.ヒトにおけるそのような沈降物の原因は発見されていない.この論文の著者は,腎症が胎内で発症し始め,出生時には腎不全とネフローゼ症候群になっていた新生児を研究した.その乳児と両親をその後調査したところ,以前の流産後に同種抗体が母親に発現し,また母親は中性エンドペプチダーゼを欠損していたことが立証された.母親に中性エンドペプチダーゼが欠けているため,腎症は母親には発現しなかったが,この母親由来の IgG 抗体を注入したウサギでは腎症が発現した.これらの抗体は,中性エンドペプチダーゼに反応し,共に上皮下の免疫沈降物に局在していた.
    中性エンドペプチダーゼに対する母親の同種免疫は,新生児の膜性腎症を引き起す可能性がある.

REVIEW ARTICLE

  • 最近の概念:心房細動に対する植込み型装置
    Current Concepts: Implantable Devices for Atrial Fibrillation

    最近の概念:心房細動に対する植込み型装置

    過剰駆動ペーシングは期外収縮および他の心房細動の誘因を抑制することができる.両側ペーシングが心房細動の予防に役立つかもしれない.植込み型心房除細動器はプログラミングでき,ショックを与えて心房性頻拍性不整脈を終息させ,洞調律を回復させることができる.
    この "Review Article" で述べられたアプローチは,心房細動の管理法を変え始めている.