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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

October 17, 2002
Vol. 347 No. 16

  • 早期乳癌に対する乳房温存術と根治的乳房切除の比較
    Breast-Conserving Surgery versus Radical Mastectomy for Early Breast Cancer

    早期乳癌に対する乳房温存術と根治的乳房切除の比較

    1973 年から始められた,イタリアのミラノ癌研究所(Milan Cancer Institute)における無作為試験で,早期乳癌に対する根治的乳房切除の有効性と縮小手術と術後の局所放射線療法との併用の有効性が比較された.中央値 20 年の追跡調査後,2 群における全生存率は,ほぼ同程度であった.
    ハルステッド根治的乳房切除の有効性は,公理のこととして 80 年間受け入れられてきたが,この仮定の妥当性は,厳密な科学的試験を受けていな かった.この報告は,局所の外科的治療の範囲が乳癌の転帰において決定的に重要ではないことを明白に証明している.(北米の多施設共同試験において乳腺腫瘤摘出を受けた女性の 20 年追跡調査についての Fisher らの報告 [1233 ページ]も参照.)

  • 乳房全摘と乳腺腫瘤摘出を比較する試験の 20 年追跡調査
    20-Year Follow-up of a Trial Comparing Total Mastectomy with Lumpectomy

    乳房全摘と乳腺腫瘤摘出を比較する試験の 20 年追跡調査

    1985 年,Fisher らが早期乳癌の外科治療に関する無作為試験の結果を報告した.術後 5 年において,乳房全摘術を受けた女性,乳腺腫瘤摘出術を受けた女性,および術後放射線照射療法を併用した乳腺腫瘤摘出術を受けた女性のあいだに生存率の差はなかった.今回,同じグループが,その研究における 1,851 例の女性に関する 20 年の追跡調査のデータを報告している.結果は同様である:乳房全摘に有利な点はない.
    最初の研究は,早期乳癌治療における大転換に寄与し,この疾患を抱えた数え切れない数の女性の QOL を改善した.この長期間の追跡研究は,早期乳癌の適格女性に対する乳腺腫瘤摘出術の有効性への信頼を強化するであろう.(1227 ページの Veronesi らによるイタリアのミラノにおける乳房温存術を受けた女性の 20 年追跡調査の報告も参照.)

  • 自動体外除細動器の公共利用
    Public Use of Automated External Defibrillators

    自動体外除細動器の公共利用

    この観察研究は,シカゴにある 3 つの空港旅客ターミナル全域に,利用しやすい自動体外除細動器を設置したあとの,初期の実績について述べている.2 年間に 18 例の患者が心室細動をきたし,うち 11 例は蘇生に成功した.救助者の大半は善意の人々で,自発的に行動した.11 例中 6 例では,救助者は自動体外除細動器の使用について事前トレーニングを受けていなかったが,救助者 3 名は医学の学位をもっていた.10 例(56%)は 1 年後も生存し,神経学的に正常であった.
    行動する義務がなく,自動体外除細動器の使用について事前のトレーニングを受けていない第三者が,自動体外除細動器を上手に使って救命することができる.オヘア空港の乗客には多くの保健医療関係者が含まれているため,これらの結果を一般化する前に異なる状況で確認することが必要である.

  • 患者の安全シリーズの Special Article:臨床医の疲労と患者の安全
    Special Article in the Patient Safety Series: Fatigue among Clinicians and the Safety of Patients

    臨床医,とくに研修医は,長時間労働し,睡眠が不十分なことが多い.臨床医の疲労が医療ケアの質に与える影響は十分には研究されていないが,睡眠不足は医療過失を起す可能性が大きい.この論文は,疲労が業務遂行に及ぼす影響,ならびに研修医の労働時間を規制する現在の政策,研修医の交替勤務を管理する新しい規制の選択に関して概説している.著者らは,臨床医の労働時間が長いとヘルスケアの質に悪影響を及ぼすため,改善が必要だと論じている.

  • 最近の概念:高血圧治療に合併する腎不全
    Current Concepts: Renal Dysfunction Complicating the Treatment of Hypertension

    最近の概念:高血圧治療に合併する腎不全

    高血圧と腎不全を有する患者では,血圧が低下すると,しばしば血清クレアチニン濃度の上昇がみられる.その場合,医師は,降圧剤による治療を減らすことにより対応するだろう.しかし,この論文で説明しているように,腎機能の低下は血行力学的なものであり,腎臓の自己調節の変化に起因する.そのようなクレアチニンの増加は,糸球体内圧がうまく減圧されていることの証拠ととらえ,医師は降圧治療を継続するべきである.