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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

November 14, 2002
Vol. 347 No. 20

  • 細菌性髄膜炎における転帰改善のためのデキサメタゾン療法
    Dexamethasone Treatment to Improve Outcomes in Bacterial Meningitis

    デキサメタゾンを用いた補助療法は,急性細菌性髄膜炎の成人における罹患率と死亡率を減少できるであろうか? この無作為二重盲検試験には患者 301 例が組み入れられ,抗菌剤に加えてデキサメタゾンの投与を 4 日間受けた群のほうが,プラセボと抗菌剤の投与を受けた群よりも,転帰が明らかに優れていた.デキサメタゾン療法では,不良な転帰のリスクが大幅に減少し(相対リスク 0.59),死亡率は 15%から 7%に減少した.
    この試験は入念に対照を設定しており,細菌性髄膜炎の成人における治療に重要な影響を与えると考えられる.最大の有用性は,肺炎球菌性髄膜炎患者でもたらされた.デキサメタゾン療法を受けた患者で,消化管出血のリスクに有意な増加はみられなかった.

  • 初回心血管系イベントの予測における C 反応性蛋白
    C-Reactive Protein in the Prediction of First Cardiovascular Events

    初回心血管系イベントの予測における C 反応性蛋白

    炎症マーカーの 1 つである C 反応性蛋白は,冠動脈イベントを含む心血管系イベントのリスクを予測するかもしれないことが研究で示唆されている.およそ 28,000 人の女性を対象にしたこの研究では,C 反応性蛋白濃度は,他の既知の冠動脈リスク因子とは独立して,その後の心血管系イベントのリスクを予測することがわかった.C 反応性蛋白濃度と低比重リポ蛋白コレステロール濃度は,リスク予測において相補的であることも判明した.
    心血管系のリスクを予測することは,重要な目標である.C 反応性蛋白測定値をこのリスクに対するスクリーニング検査に使用することが,議論されている.

  • サイクリン E と乳癌における生存率
    Cyclin E and Survival in Breast Cancer

    サイクリン E と乳癌における生存率

    細胞周期を制御する分子ネットワークの一部であるサイクリン E の濃度は,乳癌細胞株で上昇する.乳癌組織において,サイクリン E の高い濃度は転帰が不良であることと相関しており,一方,低い濃度は良好な転帰と相関していた.
    この研究が裏付けられれば,乳癌患者における予後情報を得るために,サイクリン E の測定が利用されるであろう.サイクリン E を測定する明らかな臨床的理由の 1 つは,治療試験に組み入れる乳癌患者を層別するためであろう.

  • 糖尿病女性における無症候性細菌尿
    Asymptomatic Bacteriuria in Women with Diabetes

    糖尿病女性における無症候性細菌尿

    糖尿病の女性に対して,合併症予防のため無症候性細菌尿の治療が推奨されている.この試験では,無症候性細菌尿の糖尿病女性 55 例を抗菌剤治療に,50 例をプラセボ投与に無作為に割付けた.平均追跡調査期間 27 ヵ月後の,症候性尿路感染症の発生率はほぼ同じで,抗菌剤治療群は 42%,プラセボ群は 40%であった.また,腎盂腎炎や尿路感染症による入院の率にも,2 群間に有意差は認められなかった.しかし,これらの差の 95%信頼区間は広かった.
    糖尿病女性においては,無症候性細菌尿に対してスクリーニング検査を行い治療するという方針により,多量の抗菌剤が利用されているが,合併症を予防するとは考えられない.この対照試験の知見は,このような方針に疑念を投げかけている.

  • Special Article:死亡率の格差に対する主要疾患の寄与
    Special Article: Contribution of Major Diseases to Disparities in Mortality

    Special Article:死亡率の格差に対する主要疾患の寄与

    全死因死亡率は,教育期間が短い人および黒人のほうが高い.この研究では,死因別死亡率を調査し,平均余命の教育程度による格差と人種による格差に対する,主要な健康問題の相対的寄与を評価している.教育格差のもっとも大きな原因となっていた疾患は,喫煙関連の疾患であった.虚血性心疾患はこの格差の 12%を説明し,肺癌は 8%,脳卒中は 6%,うっ血性心不全は 5%,肺疾患は 5%を説明した.人種格差は,喫煙関連の疾患による死亡ではなく,高血圧,ヒト免疫不全ウイルス感染,糖尿病,および外傷によるものであった.
    健康格差をなくすための公衆衛生と教育での努力は,健康転帰における人種格差と教育格差のもっとも大きな原因となっている特定の疾患に焦点を当てるべきである.

  • 疾患のメカニズム:ヒト腫瘍細胞
    Mechanisms of Disease: Human Tumor Cells

    癌細胞の遺伝的,生化学的,生理学的変化の見掛けの複雑さは,癌の起源の解明と,悪性疾患の新しい治療法の開発を失速させる恐れがある.著者らは,正常表現型から悪性表現型に細胞を形質転換させるにはわずか 5 個の改変しか必要でないとする,かなり簡易化されたスキームを提案している.

  • 患者の安全シリーズの Health Policy Report:有害事象の報告
    Health Policy Report in the Patient Safety Series: Reporting of Adverse Events

    有害事象の報告システムは,ケアの過程における改善可能な問題を明らかにすることにより,医療過失を減らすことができる.しかし,現在の報告システムは,幅広く使用されておらず,効果の高いものでもない.報告システムがいちばん効果を発揮するのは,それが信頼がおけ,かつ使いやすいもので,報告の専門的な分析を提供し,適時のフィードバックを与えてくれる場合である.
    自発的な報告システムを根本的に変え,発展させられれば,患者の安全を向上させる可能性をもつ.