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日本語アブストラクトこの論文は 2020 年 6 月 4 日に撤回されました。

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Covid-19 における心血管疾患,薬物療法,死亡
Cardiovascular Disease, Drug Therapy, and Mortality in Covid-19

M.R. Mehra and Others

背景

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)には,心血管疾患を有する人が不均衡に多く罹患する可能性がある.この臨床背景でアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が有害作用をもたらす可能性について,懸念が提起されている.

方 法

アジア,欧州,北米の 169 病院から得た観察データを用いて,Covid-19 で入院した患者における,心血管疾患および薬物療法と,院内死亡との関連を評価した.対象は 2019 年 12 月 20 日~2020 年 3 月 15 日に入院し,国際登録データベース「サージカルアウトカムズ・コラボレーティブ」に登録され,2020 年 3 月 28 日時点での院内死亡または生存退院の状態が記録されていた患者とした.

結 果

解析の時点で退院時の状態に関する情報が得られた Covid-19 患者 8,910 例のうち,515 例(5.8%)が院内で死亡し,8,395 例が生存退院していた.院内死亡リスクの上昇と独立の関連がみられた因子は,年齢 65 歳超(死亡率:10.0% 対 65 歳以下 4.9%,オッズ比 1.93,95%信頼区間 [CI] 1.60~2.41),冠動脈疾患(10.2% 対 冠動脈疾患なし 5.2%,オッズ比 2.70,95% CI 2.08~3.51),心不全(15.3% 対 心不全なし 5.6%,オッズ比 2.48,95% CI 1.62~3.79),不整脈(11.5% 対 不整脈なし 5.6%,オッズ比 1.95,95% CI 1.33~2.86),慢性閉塞性肺疾患(14.2% 対 慢性閉塞性肺疾患なし 5.6%,オッズ比 2.96,95% CI 2.00~4.40),現喫煙者(9.4% 対 既喫煙者または非喫煙者 5.6%,オッズ比 1.79,95% CI 1.29~2.47)であった.ACE 阻害薬の使用(2.1% 対 使用なし 6.1%,オッズ比 0.33,95% CI 0.20~0.54)と ARB の使用(6.8% 対 使用なし 5.7%,オッズ比 1.23,95% CI 0.87~1.74)は,院内死亡リスクの上昇とは関連しなかった.

結 論

この研究により,Covid-19 で入院した患者では,心血管系の基礎疾患を有することが院内死亡リスクの上昇と関連することを示唆する先行の観察研究の結果が確認された.この臨床背景での ACE 阻害薬または ARB と院内死亡との有害な関連の可能性に関する懸念は,今回の結果からは確認されなかった.(ブリガム・アンド・ウィメンズ病院 先進心血管治療学 William Harvey 名誉称号から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト(DOI: 10.1056/NEJMoa2007621)