March 28, 2002 Vol. 346 No. 13
ニューヨーク市における 9 月 11 日のテロ攻撃の精神的後遺症
Psychological Sequelae of the September 11 Terrorist Attacks in New York City
S. GALEA AND OTHERS
2001 年 9 月 11 日のテロ攻撃の影響範囲は,米国では前例がないものであった.われわれは,テロ攻撃から 5~8 週間後のマンハッタン住民の急性心的外傷後ストレス障害(PTSD)およびうつ病の有病率と相関関係を検討した.
無作為番号ダイヤル方式を用いて,マンハッタン 110 番街以南に住む成人の代表サンプルと連絡を取った.参加者は,人口統計学的特性,9 月 11 日のテロ攻撃を体験したかどうか,およびテロ攻撃後の精神症状に関して質問を受けた.
インタビューを受けた成人 1,008 例のうち,7.5%がテロ攻撃と関係ある現在 PTSD と診断できる症状を報告し,9.7%が現在うつ病と診断できる症状を述べた(「現在」は,調査の 30 日以内に発症したものと定義).カナルストリート以南(すなわち世界貿易センターの近隣)に住む回答者の PTSD 罹患率は 20.0%であった.多変量モデルにおける PTSD の予測因子は,ラテンアメリカ系民族,事前のストレス要因が 2 つ以上,テロ攻撃中または直後のパニック発作,カナルストリート以南に在住,テロ攻撃による財産の喪失,であった.うつ病の予測因子は,ラテンアメリカ系民族,事前のストレス要因が 2 つ以上,パニック発作,社会的支援の低レベル,テロ攻撃中の友人や血縁者の死亡,テロ攻撃による失業であった.
9 月 11 日のテロ攻撃後,マンハッタンには,急性 PTSD とうつ病の相当な重荷があった.テロ攻撃に遭うなどの経験は,現在の PTSD の予測因子であり,テロ攻撃の結果としての損失は現在のうつ病の予測因子であった.テロ攻撃の余燼では,住民に相当な精神的病的状態が生じている可能性がある.