April 19, 2007 Vol. 356 No. 16
小児集中治療室の患児に対する輸血戦略
Transfusion Strategies for Patients in Pediatric Intensive Care Units
J. Lacroix and Others
重症の小児に対する赤血球輸血において,最適なヘモグロビン閾値は不明である.われわれは,多臓器不全の転帰を判断基準として,白血球除去濃厚赤血球を使用し輸血を制限する戦略は,制限のない輸血戦略と同様に安全であるとの仮説を立てた.
この非劣性試験では,病状の安定している重症の小児で,集中治療室への入室から 7 日以内にヘモグロビン濃度が 9.5 g/dL 以下となった 637 例を組み入れた.このうち 320 例を赤血球輸血を施行するヘモグロビンの閾値を 7 g/dL とする群(制限輸血群)に,317 例を 9.5 g/dL とする群(通常輸血群)に無作為に割り付けた.
制限輸血群のヘモグロビン濃度は,通常輸血群よりも平均値(±SD)が 2.1±0.2 g/dL 低い状態で維持された(平均値は最低でそれぞれ 8.7±0.4 g/dL,10.8±0.5 g/dL;P<0.001).制限輸血群の患児が受けた輸血は 44%少なく,輸血を受けなかった患児は制限輸血群で 174 例(54%)であったのに対し,通常輸血群では 7 例(2%)であった(P<0.001).多臓器不全症候群(主要転帰)の発症あるいは増悪がみられた患児は,制限輸血群では 38 例であったのに対し,通常輸血群では 39 例であった(両群とも 12%)(制限輸血による絶対リスク減少率 0.4%,95%信頼区間-4.6~5.4).各群でそれぞれ 14 例が,無作為化から 28 日以内に死亡した.有害事象を含むその他の評価項目には有意差はみられなかった.
病状の安定している重症の小児において,赤血球輸血を施行するヘモグロビンの閾値を 7 g/dL とすることで,有害な転帰を増加させることなく輸血の必要性を減少させることができる.(Controlled-trials.com 番号:ISRCTN37246456)