February 8, 2007 Vol. 356 No. 6
肺胞蛋白症における GM-CSF 自己抗体と好中球機能障害
GM-CSF Autoantibodies and Neutrophil Dysfunction in Pulmonary Alveolar Proteinosis
K. Uchida and Others
肺胞蛋白症の患者における感染による死亡率の上昇は,同症にみられる顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する高濃度の自己抗体と関連している.好中球機能が肺胞蛋白症の患者において障害され,その機能異常は GM-CSF 自己抗体によって引き起されるという仮説を検証した.
肺胞蛋白症の被験者 12 例,健常な対照被験者 61 例,嚢胞性線維症または末期肝疾患のいずれかを有する対照被験者 12 例を検討した.また,GM-CSF-/-マウスと対照野生型マウスも検討した.無刺激の基礎好中球機能,抗菌機能を増強する GM-CSF によるプライミング後の好中球機能を評価し,また高度に精製した GM-CSF 自己抗体が in vitro と in vivo において健常好中球機能に及ぼす影響を評価した.
肺胞蛋白症の被験者の好中球は,正常な微細構造と分化マーカーをもつが,基礎機能と GM-CSF プライミング後の抗菌機能は障害されていた.また,GM-CSF-/-マウスでは基礎好中球機能が低下していたが,GM-CSF プライミング後の機能は障害されていなかった.肺胞蛋白症に特徴的な好中球機能異常は,健常対照被験者の血液検体を肺胞蛋白症患者からアフィニティー精製した GM-CSF 自己抗体とインキュベーションすることで用量依存的に再現された.野生型マウスへのマウス GM-CSF 抗体の投与も,好中球機能障害を引き起した.
GM-CSF 自己抗体の存在により,肺胞蛋白症の患者では好中球の抗菌機能が低下している.これらの自己抗体の作用は,GM-CSF が好中球機能の不可欠な制御因子であることを示している.