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July 8, 2010 Vol. 363 No. 2

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角膜輪部幹細胞治療と長期角膜再生
Limbal Stem-Cell Therapy and Long-Term Corneal Regeneration

P. Rama and Others

背景

角膜輪部は,角膜と眼球結膜のあいだの狭い領域であるが,角膜の再生と修復には角膜輪部に存在する幹細胞が関与している.眼熱傷を負った場合,角膜輪部が損傷し,角膜上皮幹細胞疲弊症を引き起こすことがある.われわれは,障害度の高い眼疾患である角膜上皮幹細胞疲弊症を伴う熱傷関連角膜損傷患者において,細胞治療の長期臨床転帰を検討した.

方 法

フィブリン上で培養した自家角膜輪部幹細胞を用いて,角膜損傷患者 112 例を治療した.患者の多くは熱傷により角膜上皮幹細胞疲弊症をきたしていた.臨床転帰は Kaplan-Meier 法,Kruskal-Wallis 検定,単変量ロジスティック回帰分析,多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した.また,培養細胞中で強く染色される細胞(p63 bright 細胞)として検出されるホロクローン形成幹細胞の割合によって臨床転帰を評価した.

結 果

透明な角膜上皮再生の永久修復は 76.6%の眼球で認められた.再生失敗は 1 年以内にみられた.回復した眼球は最長 10 年(平均 2.91±1.99 年,中央値 1.93 年)の追跡期間中安定していた.事後解析において,再生成功,すなわち角膜実質上における正常上皮の形成は,培養細胞中の p63 bright ホロクローン形成幹細胞の割合と関連していた.培養細胞中の p63 bright 細胞数が全クローン原性細胞数の 3%を超える患者では,78%で移植が成功したのに対し,p63 bright 細胞数が 3%以下の患者では,成功したのはわずか 11%であった.また再生失敗は,最初の眼球損傷の程度や術後の合併症とも関連していた.

結 論

角膜輪部幹細胞の培養細胞は,熱傷によるヒトの角膜損傷の治療において移植細胞源となる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 363 : 147 - 55. )