October 21, 2010 Vol. 363 No. 17
自宅でのプロトロンビン時間国際標準比測定が臨床イベントに及ぼす影響
Effect of Home Testing of International Normalized Ratio on Clinical Events
D.B. Matchar and Others
ワルファリンを用いた抗凝固療法により心房細動患者や機械弁置換患者の血栓塞栓合併症が減少するが,管理を効果的に行うのはむずかしく,プロトロンビン時間国際標準比(INR)が目標範囲外となる場合が多い.INR の自己測定器を用いた場合,静脈血漿検査よりも測定頻度と患者の関与を高めることができ,臨床転帰が改善される可能性がある.
機械弁または心房細動のためワルファリン投与を受けており,かつ INR の自己測定器を使う能力のある 2,922 例の患者を,週 1 回自宅で自己測定を行う群と,月 1 回クリニックで質の高い検査を行う群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,主要イベント(脳卒中,重大な出血エピソード,死亡)の初回発生までの期間とした.
2.0~4.75 年間患者を追跡し,追跡期間は合計で 8,730 患者・年であった.自己測定群の主要イベントの初回発生までの期間は,クリニック検査群に比べて有意に長くはなかった(ハザード比 0.88,95%信頼区間 0.75~1.04,P=0.14).自己測定群のほうが小出血のエピソードの報告が多かったことを除き,臨床転帰の発生率は両群で同程度であった.追跡期間全体で,自己測定群では INR が目標範囲内であった期間の割合が,わずかではあるが有意に改善した(両群間の絶対差 3.8 パーセントポイント,P<0.001).追跡調査 2 年の時点では,自己測定群において,抗凝固療法に対する患者の満足度(P=0.002)と QOL(P<0.001)にもわずかではあるが有意な改善が認められた.
週 1 回自己測定を行った場合,月 1 回クリニックで質の高い検査を行った場合に比べて,脳卒中,重大な出血エピソード,死亡の初回発生までの期間は,先行研究で示唆されているほど延長されなかった.この結果は,ワルファリン療法を受けている患者の脳卒中,重大な出血エピソード,死亡のリスクを低下させるうえで,クリニックでの検査に対する自己測定の優越性を支持するものではない.(米国退役軍人局共同研究プログラムから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00032591)