September 2, 2010 Vol. 363 No. 10
高血圧性慢性腎臓病における強化血圧コントロール
Intensive Blood-Pressure Control in Hypertensive Chronic Kidney Disease
L.J. Appel and Others
観察研究において,血圧と末期腎不全(ESRD)とは,直接的・段階的に関連していることが示されている.高血圧に関連する慢性腎臓病と ESRD は,黒人患者ではとくに重い負担となっている.しかし,黒人患者において,強化血圧コントロールにより慢性腎臓病の進行を遅らせることができるかどうかを検討した研究はほとんどない.
高血圧性慢性腎臓病を有する黒人患者 1,094 例を,強化血圧コントロール群と標準血圧コントロール群に無作為に割り付けた.試験期間終了後,患者に血圧 130/80 mmHg 未満を目標とするコホート期間への参加を呼びかけた.コホート期間における主要臨床転帰は慢性腎臓病の進行とし,血清クレアチニン値の 2 倍の上昇,ESRD の診断,死亡のいずれかと定義した.追跡期間は 8.8~12.2 年であった.
試験期間における平均血圧は,強化コントロール群 130/78 mmHg,標準コントロール群 141/86 mmHg であった.コホート期間における平均血圧は,強化コントロール群 131/78 mmHg ,標準コントロール群 134/78 mmHg であった.いずれの期間においても,主要転帰のリスクに両群間で有意差は認められなかった(強化コントロール群のハザード比 0.91,P=0.27).しかし,効果はベースラインの蛋白尿量によって異なり(相互作用の P=0.02),蛋白/クレアチニン比が 0.22 を超える患者に有益である可能性が示された(ハザード比 0.73,P=0.01).
全体の解析においては,強化血圧コントロールによる腎疾患進行に対する抑制効果は認められなかった.しかし,その効果はベースラインで患者に蛋白尿が認められるかどうかで異なる可能性がある.(米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所,米国国立マイノリティー健康・健康格差センターほかから研究助成を受けた.)