心血管系の原因による脳卒中および死亡のリスクに対する生理的ペーシングの効果と心室ペーシングの効果との比較
Effects of Physiologic Pacing versus Ventricular Pacing on the Risk of Stroke and Death Due to Cardiovascular Causes
S.J. CONNOLLY AND OTHERS
生理的ペーシング(房室双方または心房)は,心房細動,脳卒中,および死亡のリスクの低下との関連が認められているために,単室(心室)のペーシングよりも優れているかもしれないということが,これまでの知見から示唆されている.しかしながら,これらの有益性は,大規模無作為比較試験では評価されていない.
本試験への組入れ適格患者は,カナダの 32 の医療センターにおいて,慢性心房細動以外で,症候性徐脈の治療としてペースメーカの初回植込みが予定されていた患者であった.これらの適格患者を,心室ペースメーカまたは生理的ペースメーカのいずれかの植込みに無作為に割り付け,平均で 3 年間にわたる追跡調査を行った.主要評価転帰は心血管系の原因による脳卒中または死亡とし,副次的評価転帰は全死因死亡,心房細動,および心不全による入院とした.
1,474 例が心室ペースメーカーの植込みに,1,094 例が生理的ペースメーカの植込みに無作為に割り付けられた.脳卒中または心血管系の原因による死亡の年間発生率は,心室ペーシングが 5.5%であったのに対して,生理的ペーシングは 4.9%であった(相対リスク減少,9.4%;95%信頼区間,-10.5~25.7% [負の値はリスクの上昇を示す];p = 0.33).心房細動の年間発生率は,生理的ペーシング群の患者(5.3%)が,心室ペーシング群の患者(6.6%)よりも有意に低く,その相対リスク減少は 18.0%(95%信頼区間,0.3~32.6%;p = 0.05)であった.この心房細動の発生率に対する効果は,植込み後 2 年間は明らかではなかった.全死因死亡と心不全による入院の年間発生率の観察値は,心室ペーシングの患者よりも生理的ペーシングの患者で低かったが,有意な低下ではなかった(死亡の年間発生率は心室ペーシングが 6.6%,生理的ペーシングが 6.3%;心不全による入院の年間発生率はそれぞれ 3.5%および 3.1%).周術期の合併症については,生理的ペーシングが心室ペーシングよりも有意に多かった(9.0% 対 3.8%,p<0.001).
生理的ペーシングには,脳卒中または心血管系の原因による死亡の予防において,心室ペーシングを上回る利益はほとんどない.