April 19, 2001 Vol. 344 No. 16
ラロキシフェンの治療を受けた閉経後の女性の認知機能
Cognitive Function in Postmenopausal Women Treated with Raloxifene
K. YAFFE AND OTHERS
エストロゲンは,閉経後女性の認知に有益な作用をもつか,認知機能低下のリスクを減少させる可能性がある.選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であるラロキシフェン(raloxifene)に,これらに類似した作用があるのかどうかはわかっていない.
複数転帰に関するラロキシフェン評価試験(MORE 試験)の一環として,25 ヵ国 178 施設で組み入れられた閉経後骨粗鬆症の女性 7,478 例(平均年齢,66 歳)を対象とした検討を行った.これらの患者を,3 年間にわたり,ラロキシフェン 60 mg を連日投与する群,120 mg を連日投与する群,プラセボを連日投与する群に無作為に割り付けた.試験開始時,試験開始後 6 ヵ月目,1 年目,2 年目,および 3 年目に 6 種類の認知機能の検査を実施し,これらの検査の各治療群の平均スコアを比較した.試験 3 年目のスコアが悪化の方向にもっとも大きく変化した女性 10%を,認知機能が低下した女性として分類した.
試験開始時の平均認知スコアは,三つの治療群の女性で同程度であった.また,認知スコアは,三つのすべての群において 3 年間の試験期間中にわずかに改善したが,治療群間には有意差は認められなかった.認知機能の低下のリスクは,実施した六つの検査のうちの 4 検査による評価では,二つのラロキシフェン群を併合した群とプラセボ群のあいだに有意な差は認めらなかったが,言語性記憶(相対リスク,0.77)および注意力(相対リスク,0.87)を測定する二つの検査では,ラロキシフェンの併合群で認知機能の低下が軽度であるという傾向がみられた.なお,一過性のほてりの新たな報告や悪化が,検査のスコアあるいは検査の性能に対する治療の効果に不利な影響を及ぼしているというようなことはなかった.
閉経後の骨粗鬆症の女性において,3 年間のラロキシフェンの治療は,総合認知スコアに影響を及ぼさない.