January 3, 2008 Vol. 358 No. 1
神経膠腫摘出術における言語機能マッピング後の機能的転帰
Functional Outcome after Language Mapping for Glioma Resection
N. Sanai, Z. Mirzadeh, and M.S. Berger
大脳皮質の言語野は患者によって異なる.覚醒下の言語機能マッピングは,脳腫瘍摘出術に伴う言語障害を最小限に抑えるために考案された術中手技である.
言語機能マッピングを利用した脳腫瘍摘出後の言語機能を検討するため,連続した神経膠腫患者 250 例を調べた.陽性の言語野(1 cm×1 cm の大脳皮質内の言語領域で,双極電極を用いて一時的に不活性化した領域)を同定し,皮質の言語機能マップ上に区分した.腫瘍は,術中刺激が言語障害をもたらす皮質領域から 1 cm の部位まで切除した.われわれの摘出方法は,術野内での刺激誘発性言語野の確認を必要としなかった.
250 例のうち,145 例が術中の刺激誘発性発話停止を伴う部位を 1 ヵ所以上有し,82 例が失名詞,23 例が失読を呈した.全体で,3,281 の皮質部位のうち 3,094 の部位(94.3%)は,刺激誘発性の言語障害と関連していなかった.計 159 例(63.6%)は術前の言語機能に問題はなかった.術後 1 週の時点で,ベースラインの言語機能は 194 例(77.6%)で維持され,21 例(8.4%)で悪化し,35 例(14.0%)で新たな言語障害が生じた.しかし,術後 6 ヵ月の時点で言語障害が持続していたのは,生存患者 243 例中 4 例(1.6%)のみであった.術中の言語機能データから作成された皮質マップにより,優位半球内の言語野の分布の驚くべき多様性も示された.
皮質曝露を限定するために患者ごとに調整した開頭術により,陽性の言語野の局在同定を行わなくても,言語障害を引き起こすことなく大部分の神経膠腫を積極的に摘出することができる.今回の研究で作成された複合言語機能マップから,現行のヒトの言語機構モデルでは,観察された言語機能を十分に説明することはできないことが示された.