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June 10, 2010 Vol. 362 No. 23

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2009 H1N1 インフルエンザ集団感染の封じ込めを目的としたオセルタミビルの包囲予防投与
Oseltamivir Ring Prophylaxis for Containment of 2009 H1N1 Influenza Outbreaks

V.J. Lee and Others

背景

2009 年 6 月 22~25 日に,シンガポール軍基地 4 ヵ所において,パンデミックインフルエンザ A(H1N1)ウイルスの集団感染が発生した.半閉鎖環境における 2009 H1N1 インフルエンザ集団感染の制御を目的としたオセルタミビルの包囲予防投与(予防投与による地域封じ込め)の有効性を報告する.

方 法

感染が疑われる兵士全員に検査を行い,感染が確認された場合は病院に隔離した.さらに,ウイルスの拡散を阻止するため,ウイルス曝露後にオセルタミビルの包囲予防投与を行い,感染者が発生した部隊は行動時間をずらすことで隔離した.全員から週 3 回鼻咽頭検体を採取し,逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)と,塩基配列決定によりウイルス学的感染をスクリーニングし,質問票により臨床症状をスクリーニングした.

結 果

4 ヵ所で計 1,175 人が感染リスクを有し,1,100 人がオセルタミビルの予防投与を受けた.インフルエンザ感染者数は,介入前は 75 例(6.4%)であったのが,介入後は 7 例(0.6%)であった.全体の再生産数(発端症例に起因する新規症例数)は,介入前の 1.91(95%信頼区間 [CI] 1.50~2.36)から介入後は 0.11(95% CI 0.05~0.20)へと有意に減少した.4 ヵ所のうち,3 ヵ所で介入後の感染率に有意な低下が認められた.分子疫学的解析より,4 ヵ所の集団感染はすべて A/ニューヨーク/18/2009(H1N1)に由来しており,各集団感染における症例は伝播によるもので,無関係の感染によるものではないことが示された.オセルタミビルの投与を受けた 816 人を調査した結果,63 人(7.7%)で中等度の非呼吸器系の副作用が報告されたが,重度の有害事象は認められなかった.

結 論

オセルタミビルの包囲予防投与と感染者の迅速な同定と隔離は,半閉鎖環境における 2009 H1N1 インフルエンザの集団感染の影響の抑制に有効であった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2010; 362 : 2166 - 74. )