September 27, 2012 Vol. 367 No. 13
運転に適さない患者に対する医師の警告と交通事故による外傷のリスク
Physicians' Warnings for Unfit Drivers and the Risk of Trauma from Road Crashes
D.A. Redelmeier and Others
自動車運転に適さない可能性のある患者に対する医師の警告は,自動車事故による外傷を予防するための医学的介入である.われわれは,医学的警告とその後の交通事故のリスクとの関連を評価した.
カナダのオンタリオ州で,2006 年 4 月 1 日~2009 年 12 月 31 日に,医師に運転に適さない可能性があると判断され,医学的警告を受けた連続する患者を同定した.18 歳未満の患者,オンタリオ州の住民ではない患者,州の健康保険の有効な健康保険証番号のない患者は除外した.警告を受ける前のベースライン期間と,警告を受けた後の期間における,交通事故による救急部受診を分析した.
患者 100,075 例が医師 6,098 人から医学的警告を受けた.ベースライン期間の 3 年間に,患者が運転し,救急部を受診した交通事故は 1,430 件あったのに対し,警告後の 1 年間では 273 件あり,警告後,患者 1,000 例あたりの年間事故発生率は約 45%低下した(4.76 対 2.73,P<0.001).事故発生率の低下は,患者背景に関係なく認められた.警告後の,患者が歩行者または乗客であった場合の事故には有意な変化は認められなかった.医学的警告は,警告後の抑うつによる救急部受診の増加と,主治医への再受診の減少に関連していた.
運転に適さない可能性のある患者に対する医師の警告により,その後の交通事故による外傷が減少する可能性があるが,気分障害が悪化したり,医師-患者間の関係が損なわれる可能性もある.(カナダ研究チェアプログラムほかから研究助成を受けた.)