急性骨髄性白血病におけるゲノム分類と予後
Genomic Classification and Prognosis in Acute Myeloid Leukemia
E. Papaemmanuil and Others
最近の研究で,急性骨髄性白血病(AML)で認められる変異遺伝子の詳細な数が明らかになっている.われわれの次の課題は,この遺伝的多様性から,どのようにして AML の病態生理を明らかにし,どのようにして臨床診療に有用な情報がもたらされるのかを理解することである.
強化化学療法に関する 3 件の前向き試験から 1,540 例を登録した.癌遺伝子 111 個のドライバー変異を,細胞遺伝学的データおよび臨床データと組み合わせ,AML ゲノムサブグループと,それらの臨床転帰との関連を明らかにした.
76 個の遺伝子・ゲノム領域で,ドライバー変異は 5,234 個同定され,2 個以上同定された患者は 86%であった.共変異のパターンをもとに,コホートを,異なる診断上の特徴と臨床転帰を示す 11 のサブグループに分類した.現在明らかにされている AML サブグループに,クロマチンまたは RNA スプライシング調節因子,あるいはその両方をコードする遺伝子に変異を有する AML(患者の 18%),TP53 変異または染色体異数性,あるいはその両方を有するAML(13%),条件付きで IDH2R172 変異を有する AML(1%)の 3 つの不均一なゲノムカテゴリーが新たに明らかになった.クロマチン–スプライソソームサブグループと TP53–異数性サブグループの AML 患者では転帰が不良であり,サブグループを定義するさまざまな変異が,独立に,また追加的に転帰に関与していた.サブグループを定義する変異に加えて,同時に発生している他のドライバー変異も全生存に大きな影響を及ぼした.それぞれの変異が予後に及ぼす影響は,他のドライバー変異があるかどうかで大きく変化することが多かった.そのような遺伝子間相互作用は,NPM1 変異 AML でとくに顕著であり,このサブグループでは,共変異のパターンから予後良好グループと予後不良グループが同定された.これらの予測は前向き臨床試験で検証する必要がある.
AML におけるドライバー変異の全体像から,AML 進行の別個の経路を反映する,異なる分子サブグループが明らかになり,疾患の分類と予後層別化に情報がもたらされた.(ウェルカムトラストほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00146120)