妊娠前にサイトメガロウイルスに対する免疫を獲得していた女性から産まれた新生児へのサイトメガロウイルスの子宮内伝播
Intrauterine Transmission of Cytomegalovirus to Infants of Women with Preconceptional Immunity
S.B. BOPPANA, L.B. RIVERA, K.B. FOWLER, M. MACH, AND W.J. BRITT
妊娠前に獲得されていたサイトメガロウイルス(CMV)に対する免疫は,このウイルスの子宮内伝播を完全には防げない.CMV 血清陽性の女性から産まれた子供の先天性 CMV 感染症は,別の株の CMV に母親が再感染した後に発症するのかどうかは不明である.
妊娠前に CMV に対する免疫を獲得していた 46 例の女性から,以前の妊娠時および今回の妊娠時に採取した血清検体を用いて,CMV の糖蛋白質 H の株特異的エピトープに対する抗体の分析を行った.母親の血清検体のウイルス中和活性は,CMV の継代株 AD169 と,7 例の感染新生児から分離した CMV 株に対する活性を測定した.さらに,七つの CMV 分離株の糖蛋白質 H 遺伝子のヌクレオチド配列を決定した.
感染新生児の母親 16 例中 11 例(69%)に,CMV の二つの継代株,AD169 と Towne に存在する糖蛋白質 H のエピトープに対する抗体が検出された.糖蛋白質 H に対する新しい抗体特異性を獲得していた母親は,感染新生児の母親 16 例中 10 例(62%)に対して,非感染新生児の母親では 30 例中 4 例(13%)にすぎなかった(p<0.001).新生児から分離された CMV に対する中和抗体は,7 例の母親のうちの 4 例において,今回の分娩時に採取した検体の抗体量が前回の分娩時に採取した検体の少なくとも 2 倍に増加していた.新たに獲得された母親の抗体特異性は,これらの 4 例の新生児から分離された CMV の糖蛋白質 H のエピトープのアミノ酸配列を反映したものであった.
CMV 血清陽性の女性では,別の株の CMV に再感染することによって,新生児への子宮内伝播および症状のある先天性感染症を発症させる可能性がある.