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February 1, 2001 Vol. 344 No. 5

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ワクチン接種と多発性硬化症の再発のリスク
Vaccinations and the Risk of Relapse in Multiple Sclerosis

C. CONFAVREUX, S. SUISSA, P. SADDIER, V. BOURDES, AND S. VUKUSIC

背景

ワクチン接種が,多発性硬化症の発症に関与したり,あるいは再発を誘発させるのではないかという懸念がある.近年のフランスにおける B 型肝炎ワクチン予防接種プログラムの開始以来,このワクチン接種後に活動性の多発性硬化症のリスク増大を示す新たな報告がある.

方 法

症例クロスオーバー研究を実施して,ワクチン接種によって多発性硬化症の再発のリスクが上昇するかについて評価した.この研究の被験者は,多発性硬化症の欧州データベース(the European Database for Multiple Sclerosis)に登録されていて,1993~97 年の期間に多発性硬化症が再発した患者であった.指標とした再発は,最低 12 ヵ月間の無再発期間を経て,神経科医への受診によって確認された最初の再発とした.ワクチンの予防接種に関する情報は,標準化した電話面接によって入手し,医療記録で確認した.再発直前 2 ヵ月のリスク期間におけるワクチンへの曝露を,それ以前の四つの 2 ヵ月間の対照期間における曝露と比較し,相対危険度を算出した.相対危険度の推定には,条件付きロジスティック回帰分析を用いた.

結 果

多発性硬化症の再発が確認された 643 例の患者のうち,15%が再発前の 12 ヵ月間にワクチン接種を受けたと報告した.これらの患者から報告されたワクチンの予防接種のうち,94%は医療記録で確認することができた.また,再発直前の 2 ヵ月間の危険期間にワクチンの予防接種を受けていた患者は全患者の 2.3%であったのに対して,四つの対照期間の少なくとも 1 期間にワクチンの予防接種を受けていた患者は 2.8~4.0%であった.再発直前の 2 ヵ月間に何らかのワクチンの予防接種に曝露したことに関連した再発の相対危険度は,0.71(95%信頼区間,0.40~1.26)であった.さらに,破傷風,B 型肝炎,あるいはインフルエンザのワクチンの予防接種に特異的に関連した多発性硬化症の再発のリスクの上昇も認められなかった(相対危険度の範囲,0.22~1.08).危険期間を 1 ヵ月間および 3 ヵ月間とした解析でも,同様の結果が得られた.

結 論

ワクチンの予防接種は,多発性硬化症の再発の短期リスクを上昇させてはいないようである.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 319 - 26. )