March 29, 2001 Vol. 344 No. 13
尿中のパーフォリンおよびグランザイム B のメッセンジャー RNA 測定による同種腎移植片拒絶反応の非侵襲的診断
Noninvasive Diagnosis of Renal-Allograft Rejection by Measurement of Messenger RNA for Perforin and Granzyme B in Urine
B. LI AND OTHERS
急性拒絶反応は,腎臓移植の重要かつよくみられる合併症であり,その診断は,移植片の生検という侵襲的手技に依存している.拒絶反応を診断する非侵襲的な検査は,移植の転帰を改善させうる.
生検で急性拒絶反応のエピソードが確認された 22 例の同種腎移植片レシピエントと,急性拒絶反応を示す所見はみられなかった 63 例のレシピエントから,それぞれ 24 検体および 127 検体の尿検体を採取した.RNA は尿中細胞から分離した.細胞傷害性蛋白のパーフォリンとグランザイム B をコードしているメッセンジャー RNA(mRNA)と,構成的に発現されているサイクロフィリン B の遺伝子の mRNA を,競合的定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて測定し,その発現レベルと同種移植片の状態との相関関係を調べた.
細胞傷害性蛋白をコードしているパーフォリンとグランザイム B の mRNA 量の対数変換平均値(±SD)は,生検で急性拒絶反応のエピソードが確認されていた 22 例から採取した尿中細胞のほうが,急性拒絶反応のエピソードが認められていなかった 63 例のレシピエントの尿中細胞よりも多かったが(パーフォリン,全 RNA 1 μg 中に 1.4±0.3 fg 対 -0.6±0.2 fg;p<0.001;グランザイム B,全 RNA 1 μg 中に 1.2±0.3 fg 対 -0.9±0.2 fg;p<0.001),構成的に発現されているサイクロフィリン B の mRNA 量にはこのような相違は認められなかった.受信者動作特性(ROC)曲線を用いた解析では,パーフォリン mRNA のカットオフ値を全 RNA 1 μg 当り 0.9 fg とした場合に,感度 83%,特異度 83%で急性拒絶反応を予測でき,グランザイム B mRNA のカットオフ値を全 RNA 1 μg 当り 0.4 fg とした場合に,感度 79%,特異度 77%で急性拒絶反応を予測できることが示された.また,37 例から移植後 9 日目までのあいだに連続した尿検体を採取し,細胞傷害性蛋白をコードしている mRNA の定量によって,これら患者のなかで急性拒絶反応が発現した患者を同定することができた.
尿中細胞中の細胞傷害性蛋白をコードしている mRNA の測定は,同種腎移植片の急性拒絶反応を診断する非侵襲的な一つの方法を提供する.