October 25, 2001 Vol. 345 No. 17
重症熱傷後におけるβ遮断による異化作用の逆転
Reversal of Catabolism by Beta-Blockade after Severe Burns
D.N. HERNDON, D.W. HART, S.E. WOLF, D.L. CHINKES, AND R.R. WOLFE
重症熱傷に対するカテコールアミン介在性代謝亢進反応は,エネルギー消費および筋肉蛋白質の異化を増大させる.われわれは,重症熱傷の患者において,プロプラノールによるβアドレナリン作用性刺激の遮断は,安静時のエネルギー消費および筋肉異化を減少させるだろうという仮説を立てた.
急性の重症熱傷(総体表面積の 40%以上を占める熱傷)の小児 25 例を,無作為試験において検討した.13 例にプロプラノールを最低でも 2 週間経口投与し,12 例を無治療対照とした.プロプラノールの投与量は,安静時心拍数が,各患者の試験開始時の値から 20%低下するように調整した.安静時のエネルギー消費および骨格筋蛋白質の動態を,β遮断(対照では無治療)の実施前および 2 週間実施後に測定した.体組成は入院中を通して経時的に測定した.
対照群とプロプラノール群の患児は,年齢,体重,熱傷を負った総体表面積の割合,第 3 度の熱傷を負った体表面積の割合,および受傷から代謝検査までの期間に関して,類似していた.β遮断は,プロプラノール群において,心拍数および安静時のエネルギー消費を,試験開始時の値との比較(それぞれ p<0.001 および p=0.01)および対照群の値との比較(それぞれ p=0.03 および p=0.001)の両方において低下させた.筋肉蛋白質平衡は,プロプラノール群では試験開始時の値よりも 82%増加したのに対して(p=0.002),対照群では 27%低下した(p 値は有意には達しなかった).全身カリウムスキャンによって測定した除脂肪体重については,プロプラノール群では実質的な変化はなかったが,対照群では平均(±SE)で 9±2%の減少が認められた(p=0.003).
熱傷を負った小児に対して,入院中にプロプラノールの治療を行うと,代謝亢進が減衰するとともに,筋肉蛋白質の異化作用が逆転する.