腸のミクロスポリジウム症のフマギリン治療
Fumagillin Treatment of Intestinal Microsporidosis
J.-M. MOLINA AND OTHERS
Enterocytozoon bieneusi による腸のミクロスポリジウム症は,免疫不全状態の患者の慢性下痢,吸収不良,および体力消耗の原因である.現在のところ,効果的な治療法はない.
われわれは,慢性 E. bieneusi 感染患者を対象にフマギリン(60 mg /日を経口で 2 週間服用)の無作為二重盲検プラセボ対照試験を実施した.有効性は,主としてミクロスポリジウムの駆除で評価したが,それは糞便検体の分析により証明された.ミクロスポリジウムが駆除されなかった患者は,非盲検フマギリン治療を 2 週間受けた.寄生虫駆除後,再発の検出のため,糞便の追跡試験を毎月行った.
この試験には患者 12 例が組み込まれ,そのうちの 10 例は後天性免疫不全症候群であり,2 例は臓器移植を受けていた.フマギリン治療群の 6 例全員でミクロスポリジウムは駆除されたが,プラセボ群 6 例ではいずれも駆除されなかった(P=0.002).またフマギリン治療は,D -キシロースの吸収(P=0.003)と Karnofsky 患者状態スコア(P<0.001)の増加およびロペラミドの使用頻度(P=0.01)と糞便の総重量(P=0.04)の減少と関連していた.重篤な有害事象(好中球減少症および血小板減少症)がフマギリン治療群患者 3 例にみられた;プラセボ群の 1 例は重症の下痢を起した.対照群患者全 6 例は後に,フマギリンによる非盲検治療後に腸のミクロスポリジウムの駆除が得られた.感染の再発は,追跡期間中 2 例で同定された(追跡期間中央値 10 ヵ月).
フマギリンは,免疫不全状態の患者の慢性 E. bieneusi 感染の効果的な治療法である.