March 28, 2002 Vol. 346 No. 13
エストロゲン受容体の多型と冠動脈疾患女性における高比重リポ蛋白コレステロールに対するエストロゲン補充の効果
Estrogen-Receptor Polymorphisms and Effects of Estrogen Replacement on HDL Cholesterol in Women with Coronary Disease
D.M. HERRINGTON AND OTHERS
エストロゲン受容体 α(ER-α)をコードする遺伝子の塩基配列変異は,閉経後女性における高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール量やエストロゲン療法と関連したその他の転帰に及ぼすホルモン補充療法の効果を修飾する可能性がある.
エストロゲン補充およびアテローム性動脈硬化に関する試験(Estrogen Replacement and Atherosclerosis trial)に登録された冠動脈疾患の女性 309 例を,以前に報告のある 8 つ,ならびに新たに同定された 2 つの ER-α 多型を解析し,そして,エストロゲン単独あるいはエストロゲン+プロゲスチン併用投与に対する HDL コレステロールやその他の脂質の応答性と,これらの多型との関連を検討した.
年齢,人種,糖尿病の有無,体格指数,喫煙の状態,飲酒,運動の頻度で調整後,IVS1–401 C/C 遺伝子型(すなわち,両染色体についてエキソン 2 の前にある介在配列 1 の 401 番の場所に C がある)を有する女性の 18.9%は,ホルモン補充療法により HDL コレステロール量が増加し,これは,他の女性で認められた増加の 2 倍以上であった(13.1 mg/dL 対 6.0 mg/dL,治療対遺伝子型相互作用に対する P=0.004);この効果は HDL 亜分画 3(HDL3)における変化に限定されていた(相互作用の P=0.04).同じような応答パターンは,他の 3 つの高度に連結した IVS1–401 部位に近接する ER-α イントロン 1 の多型について観察された(相互作用に対する P 値の範囲=0.07~0.005).IVS1–401 C/C 遺伝子型女性における HDL コレステロールの強まった応答性のパターンは,エストロゲン投与女性およびエストロゲン+プロゲスチン併用投与女性でともに明らかであり,人種および民族集団全般で保たれ,試験薬の服薬を遵守している女性間で有意であった(P<0.001).
ER-α IVS1–401 C/C 遺伝子型,あるいはいくつかの他の密接に関連した遺伝子型を有する冠動脈疾患の閉経後女性では,ホルモン補充療法に対する HDL コレステロールの応答性が増強する.