November 21, 2002 Vol. 347 No. 21
陰部ヘルペス予防のための糖蛋白 D アジュバントワクチン
Glycoprotein-D–Adjuvant Vaccine to Prevent Genital Herpes
L.R. STANBERRY AND OTHERS
有効な予防ワクチンがあれば,陰部ヘルペスの蔓延防止に有用であろう.
普段の性交相手が陰部ヘルペスの既往を有する被験者を対象として,水酸化アルミニウムおよび 3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質 A と組み合せた単純ヘルペスウイルス 2 型(HSV-2)糖蛋白 D サブユニットワクチンに関する 2 つの二重盲検無作為臨床試験を実施した.試験 1 では,被験者は単純ヘルペスウイルス 1 型(HSV-1)と HSV-2 の両方について血清反応陰性であった;試験 2 では,被験者の HSV 血清反応の状態は問わなかった.試験開始時,1 および 6 ヵ月目に,被験者にワクチンまたは対照物を注射投与し,19 ヵ月間評価を行った.主要エンドポイントは,試験 1 では全被験者,試験 2 では HSV-2 血清反応陰性の女性被験者における,陰部ヘルペス疾患の発症とした.
HSV-1 と HSV-2 の両方について血清反応陰性の被験者計 847 例(うち 268 例が女性,試験 1)と,HSV-2 血清反応陰性の被験者計 1,867 例(うち 710 例が女性,試験 2)が無作為化され注射を受けた.ワクチン接種は忍容性が高く,体液性・細胞性反応を惹起した.全体として,試験 1 のワクチン有効率は 38%(95%信頼区間-18~68%;ワクチン群では 15 例,対照群では 24 例が発症)であり,試験 2 の女性被験者における有効率は 42%(95%信頼区間-31~74%;ワクチン群では 9 例,対照群では 16 例が発症)であった.両試験でさらに解析をすすめると,ワクチンが,HSV-1 と HSV-2 の両方について血清反応陰性の女性に対して有効なことが明らかになった:試験 1 での有効率は 73%(95%信頼区間 19~91%;P=0.01)であり,試験 2 での有効率は 74%(95%信頼区間 9~93%;P=0.02)であった.ワクチンは,投与前に HSV-1 血清反応陽性かつ HSV-2 血清反応陰性であった女性に対して,あるいは男性に対しては有効ではなかった.
これらの試験が示唆するのは,糖蛋白 D ワクチンは,投与前に HSV-1 と HSV-2 の両方について血清反応陰性であった女性の陰部ヘルペスに対しては有効であるが,HSV-1 血清反応陽性かつ HSV-2 血清反応陰性の女性に対しては有効でないということである.男性に対しては,HSV の血清反応の状態にかかわらず有効ではなかった.