慢性リンパ性白血病における免疫グロブリン可変領域の変異に対する代替としての ZAP-70 の発現
ZAP-70 Expression as a Surrogate for Immunoglobulin-Variable-Region Mutations in Chronic Lymphocytic Leukemia
M. Crespo and Others
慢性リンパ性白血病(CLL)の白血病細胞で免疫グロブリン重鎖可変領域(IgVH)遺伝子が突然変異を起した状態であることは,この疾患の重要な予後因子である.われわれは,CLL 細胞による ZAP-70 の発現が,IgVH の変異状態,疾患の進行,および生存率と相関するかどうかを検討した.
ZAP-70 の発現は,T 細胞株,B 細胞株,および CLL 患者 56 例から得た末梢血検体で解析した.解析にはフローサイトメトリー,ウェスタンブロット法および免疫組織化学を用いた.結果は,IgVH の変異状態および臨床転帰と相関させた.
フローサイトメトリー解析により,CLL 患者 56 例中 32 例の T 細胞系列の細胞と白血病細胞で ZAP-70 が検出された.少なくとも 20%の白血病細胞が ZAP-70 陽性であった患者全例で,IgVH は変異していなかった.一方,白血病細胞の 20%未満のみが ZAP-70 陽性である患者 24 例中 21 例に IgVH 変異が認められた(P<0.001).ZAP-70 の発現を免疫組織化学やウェスタンブロット法で評価した場合にも,同様の結果が得られた.CLL 患者 30 例からその後採取した検体においても,ZAP-70 の発現量に経時的な変化はみられなかった(中央値 37 ヵ月).Binet 分類で A 期の CLL 患者で,ZAP-70 陽性の白血病細胞が 20%以上の患者は,ZAP-70 陽性の白血病細胞が 20%未満の患者よりも,進行が早く生存率が低かった.
CLL 患者において,フローサイトメトリー解析によって検出される ZAP-70 の発現は,IgVH の変異状態,疾患の進行,および生存率と相関していた.