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January 30, 2003 Vol. 348 No. 5

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腹膜透析と中皮細胞の上皮から間葉への移行
Peritoneal Dialysis and Epithelial-to-Mesenchymal Transition of Mesothelial Cells

M. Yáñez-Mó and Others

背景

持続的携帯型腹膜透析中に,腹膜は生体不適合性の透析液に曝露され,中皮細胞の露出や,最終的には組織線維症および限外濾過の失敗が引き起される.しかし,この過程の機序についてはまだ解明されていない.

方 法

持続的携帯型腹膜透析患者から得た透析溶液の廃液から中皮細胞を単離し,フローサイトメトリー,共焦点免疫螢光測定法,ウェスタンブロッティング,および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を用いて表現型の特徴を明らかにした.これらの細胞を大網から採取した中皮細胞と比較し,持続的携帯型腹膜透析中に観察される移行分化に類似した状態を作り出すために,in vitro でさまざまな刺激を加えた.結果は,腹膜生検検体に対して行った免疫組織化学法により,in vivo で確認した.

結 果

透析開始後間もなく,腹膜の中皮細胞は上皮表現型から間葉表現型へ移行する.これは上皮形態の進行性の喪失と,転写抑制因子 snail の誘導を介してのサイトケラチンや E カドヘリンの発現減少を伴う.また,中皮細胞は,α2 インテグリン発現のアップレギュレーションと共に走化するようになる.in vitro での分析では,創傷の修復と,中皮の分化転換を開始させる因子として線維化促進性サイトカインおよび炎症性サイトカインが示唆されている.持続的携帯型腹膜透析患者から採取した,腹膜の生検検体に対する免疫組織化学検査では,間質内に取り込まれた線維芽細胞様細胞内に,中皮のマーカーである細胞間接着分子 1 とサイトケラチンの発現が実証された.これは,これら細胞が中皮細胞の局所での転換に由来することを示唆している.

結 論

この結果は,中皮細胞が,腹膜透析中に腹膜の構造的・機能的変化に積極的役割をもつことを示唆している.また,これらの知見は,新たな透析液のデザインに向けた可能性のある標的と,患者をモニタリングするためのマーカーを示唆している.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 348 : 403 - 13. )