The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

February 13, 2003 Vol. 348 No. 7

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

高齢者における高血圧症に対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬と利尿薬の転帰の比較
A Comparison of Outcomes with Angiotensin-Converting-Enzyme Inhibitors and Diuretics for Hypertension in the Elderly

L.M.H. Wing and Others

背景

利尿薬,β 遮断薬あるいはその両者を用いた高血圧症の治療は,転帰の改善につながる.レニン-アンジオテンシン系を阻害する薬剤には,単に血圧を下げる以上の利益があると考えられてきた.われわれは,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬で治療を受けた高血圧症の高齢被験者の転帰と,利尿薬で治療を受けた高血圧症の高齢被験者の転帰とを比較した.

方 法

1,594 人の家庭医に医療を受けている 65~84 歳の高血圧症被験者 6,083 例を対象として,前向き無作為非盲検試験を実施した.エンドポイントの評価は盲検で行った.被験者を中央値 4.1 年間追跡調査し,2 つの治療群における全体の心血管イベントの合計数を,多変量比例ハザードモデルを用いて比較した.

結 果

ベースライン時での両治療群の年齢,性別,血圧はよく一致していた.試験終了時までに,血圧は両治療群ともに同程度低下した(26/12 mmHg 低下).心血管イベントあるいは全死因死亡は,ACE 阻害薬群では 695 件(1 年当り患者 1,000 例につき 56.1 例),利尿薬群では 736 件あった(1 年当り患者 1,000 例につき 59.8 例;ACE 阻害薬治療における心血管イベントあるいは死亡に対するハザード比 0.89[95%信頼区間 0.79~1.00];P=0.05).男性被験者のハザード比は 0.83(95%信頼区間 0.71~0.97;P=0.02);女性被験者のハザード比は 1.00(95%信頼区間 0.83~1.21;P=0.98);性別と治療群割付け間の相互作用に関する P 値は 0.15 であった.非致死的な心血管イベントや心筋梗塞の発生率は,ACE 阻害薬治療によって減少したが,各群ともに脳卒中の発生件数は同程度であった(ただし,ACE 阻害薬群では致死的な脳卒中がより多く生じた).

結 論

高齢被験者,とくに男性に対して ACE 阻害薬を用いた降圧治療を開始すると,血圧の下降は同程度であっても,利尿薬を用いた治療よりもよい転帰が得られると思われる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2003; 348 : 583 - 92. )