February 20, 2003 Vol. 348 No. 8
ヒト免疫不全ウイルス感染に対する治療を受けた患者における心血管疾患と脳血管疾患
Cardiovascular and Cerebrovascular Events in Patients Treated for Human Immunodeficiency Virus Infection
S.A. Bozzette, C.F. Ake, H.K. Tam, S.W. Chang,and T.A. Louis
血糖異常や高脂血症などの,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に関連した代謝異常はますます広がっており,心血管疾患や脳血管疾患の促進と関連する可能性が懸念されている.
1993 年 1 月~2001 年 6 月に,復員軍人施設で HIV 感染に対するケアを受けた患者 36,766 例を対象に,心血管疾患と脳血管疾患のリスクに関する後ろ向き研究を行った.
抗レトロウイルス療法では,患者の 70.2%はヌクレオシド類似体,41.6%はプロテアーゼ阻害剤,25.6%は非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤による治療を受けた.治療期間の中央値は,それぞれ 17 ヵ月,16 ヵ月,9 ヵ月であった.約 1,000 例の患者は,プロテアーゼ阻害剤を用いた併用療法を最低 48 ヵ月間受け,別の約 1,000 例の患者は,非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤を用いた併用療法を最低 24 ヵ月間受けた.1995 年~2001 年の間では,心血管疾患あるいは脳血管疾患による入院率は,100 患者-年当り 1.7 から 0.9 に減少し,全死因死亡率は,100 患者-年当り 21.3 から 5.0 に減少した.患者レベルの回帰分析では,ヌクレオシド類似体・プロテアーゼ阻害剤・非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤の使用と,心血管イベントや脳血管イベントに対するハザードとのあいだに関連性はみられなかったが,抗レトロウイルス薬の使用は,全死因死亡のハザードが減少することと関連していた.
HIV に対しより新しい治療法を用いることは,死亡率という点では大きな利益と関連していた.その利益は,心血管イベントや脳血管イベントの発生率,あるいはそれに関連した死亡率のいずれの増加によっても減少することはなかった.血管疾患の促進に対する懸念から,短期間の抗レトロウイルス療法を制限する必要はない.しかし,HIV 感染患者の生存の長期化により,より長期的な観察と分析が必要であることが示されている.