December 4, 2003 Vol. 349 No. 23
子宮内胎児発育遅延および出生後の成長遅延をもたらす IGF-I 受容体の変異
IGF-I Receptor Mutations Resulting in Intrauterine and Postnatal Growth Retardation
M.J. Abuzzahab and Others
子宮内発育遅延児の約 10%は小柄なままであるが,その成長不良の原因は不明であることが多い.インスリン様成長因子 I 受容体遺伝子(IGF-IR)の変異が,出生前および出生後における成長不良の症例の一部の基礎にあるという仮説を立てた.
2 群に分けた小児を対象に,IGF-IR 遺伝子の異常のスクリーニングを行った.原因不明の子宮内胎児発育遅延を呈し,その後も低身長の患児 42 例から成る群では,一本鎖 DNA 高次構造多型分析を実施し,認められたすべての異常について直接 DNA 塩基配列決定を行った.もう 1 つのコホートは,低身長で血中 IGF-I 濃度が高値の小児 50 例で構成された.小児 9 例に由来する DNA で IGF-IR 遺伝子の完全な塩基配列決定を行った.また,出生体重が正常な小児 43 例の対照群についても検討した.
最初のコホートでは,女児 1 例に IGF-IR 遺伝子のエクソン 2 に点突然変異の複合ヘテロ接合体が同定され,この変異により,アミノ酸配列が対立遺伝子の一方が Arg108Gln に,もう一方が Lys115Asn に変化していた.この患児に由来する培養線維芽細胞では,対照の線維芽細胞と比較して IGF-I 受容体の機能が低下していた.対照群 43 例にはそのような変異は認められなかった.第 2 群では,男児 1 例にナンセンス変異(Arg59stop)が認められ,この変異により線維芽細胞上の IGF-I 受容体数が減少していた.いずれの小児も子宮内発育遅延を呈し,出生後の成長が不良であった.
IGF-IR 遺伝子の変異は IGF-IR 受容体の機能や数に異常をもたらし,さらにヒトの胎児期およびその後の成長を遅延する可能性がある.